【写真上】住民有志が特産化に取り組んでいる「鳴門のよろこびにしめ」【写真下】イベント会場で振る舞われた煮しめを食べる子ども=3月、鳴門市の板東駅

【写真上】住民有志が特産化に取り組んでいる「鳴門のよろこびにしめ」【写真下】イベント会場で振る舞われた煮しめを食べる子ども=3月、鳴門市の板東駅

 鳴門市の住民有志らが、串に刺した煮しめを特産品として広めようと、市内外の観光イベントなどで販売を始めた。同市内では祝い事の際に食べる風習があり、「鳴門のよろこびにしめ」と名付けた。市内の食品業者に製造、販売してもらうよう呼び掛け、普及を図る。
 
  鳴門のよろこびにしめは、かまぼこ、ちくわ、こんにゃく、高野豆腐、ゴボウ、昆布、里芋の7品をだし汁で甘く煮て、1本の串に刺す。価格は大きさによって異なり、100~300円。

 鳴門市出身で元小学校長の冨士都美さん(63)=徳島市川内町平石=が、地元の食堂などに調理を依頼。自身が主宰する音楽サークルの仲間と共に、3月から休日に鳴門公園の一角で販売したり、徳島市の新町川沿いで定期的に開かれる産直市「とくしまマルシェ」に出店したりしている。

 冨士さんによると、鳴門市では数十年前まで、婚礼や自宅の棟上げといった祝い事があると各家庭や隣組が総出で串に刺した煮しめを作り、近所に配るのが習わしだった。しかし、近年は生活習慣の変化などから食べる機会が減っている。

 冨士さんは地域おこしのため、鳴門の食材を生かした特産品づくりを検討。串に刺した珍しさや縁起ものであることに着目した。名前は、鳴門市がアジア初演の地であるベートーベン「第九交響曲」から、最も有名な「歓喜の歌」にちなんで付けた。

 冨士さんは「煮しめを通じて、地域の絆を感じてもらえたらうれしい」と話している。