育休中は保育園に通えない?「子どものストレス」「過酷」育休退園をなくして㊤
⇨ https://www.topics.or.jp/articles/-/622916
 

 女性が第2子を出産して育児休業を取得すると、第1子が保育園(所)に通っている場合、その園(所)をやめなければならないケースがある。これがいわゆる育休退園だ。前半では、育休退園を迫られた阿南市の母親の声と同市の現状について紹介した。しかし、徳島県内で育休退園の仕組みを取り入れているのは、阿南市だけではない。

 

県内は1市4町で”育休退園”あり


【24市町村における育休中の継続利用の可否。施設の利用状況や育休期間によって、利用期間が変わる場合あり】

 県内の他の自治体はどうなのか。阿南市を除く県内23市町村で育休中の継続利用ができないのは11月現在、石井、板野、上板、美波の4町のみだった。

 板野、上板、美波の3町は阿南市と同様、保育園に通っている児童が2歳児以下の場合、退園する決まりになっている。上板町は「3歳児は人数的に余裕があるが、保育士が足りず、手いっぱい」と説明。板野町は17、18年と続けて0歳児教室を増やし、19年に定員を220人から240人に広げた。同年、原則退園としていたルールを3歳児のみ継続利用できるように変更した。町住民課は「保育園の利用可能人数がいっぱいいっぱいで、これ以上受け入れられない状態。子どもの数が減っているので状況を見ながら対応できれば」と見通しを示した。美波町は近隣自治体の状況や、保育中の母親の負担など現場の意見を参考に、来年度から年齢制限を設けず、育休中なら最長2年間、継続利用できるようにする。

 石井町は県内で唯一、年齢に関わらず、原則として継続利用を認めていない。退園のルールは保育所開設当時からあるという。町子育て支援課は「保育の必要性が高い人がサービスを受けられないことがないようにするためだ。会計年度任用職員として保育士を募集しても人が来ない。必要がある場合は個別に対応している」と説明する。
 
 保育園を新設して受け入れ人数を増やしたため、条件を緩和した自治体もある。阿南、石井、板野、上板、美波の1市4町を除く19市町村では、「1歳になる月まで」(鳴門市、藍住町など)や、「育児期間中」(小松島市、那賀町など)など期間の差はあるものの、継続利用できる。
 
 自治体によって受けられる子育て支援の差が浮き彫りになっている。県内の育休退園の状況について、県はどう捉えているのか。県次世代育成・青少年課は「県としては全ての市町村で受け入れられることが望ましいが、各市町村の実情に応じて客観的基準があると思う。市町村判断になるので、相談があれば助言する。県は潜在保育士の職場復帰や、保育士を目指す学生の就労支援などを行い、待機児童を解消し、保育人材の充足を図りたい」としている。

 

全国的には減少傾向 専門家「保育は最大の子育て支援」

「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さん。
取材はオンラインで行った

 保育園を考える親の会(東京)によると、首都圏と政令指定都市の100自治体を対象に実施した調査で、14年度は育休退園の仕組みがあるのは7自治体だった。育休退園は全国的には減少傾向で、無条件で継続利用を認める自治体も増えているという。待機児童数の多い都市部の方が退園の仕組みが少ないのはなぜか。代表の普光院亜紀さんは「一つ目の理由は、都市部の方が財政が豊かなこと。もう一つは、自治体の意識が進んでいるからではないか。保育園に通っている子を一度退園させて、次入る際にまた利用調整や入園選考にかけるというのは、親も不安だし、子どももせっかく毎日の生活リズムが整った保育園生活を送っているのに、保育園を出されて友達とも遊べなくなってしまう。育休退園は行政の子育てに対する認識、子どもの生活に対する理解不足からきているのではないか」と指摘する。
 
 統計的に共働き世帯は増え、核家族化はどんどん進んでいる。「特に今はおじいちゃんもおばあちゃんも働いていて面倒が見られない中で、孤立した子育てをして、負荷は昔よりずっと大きくなっている。家電製品が発達して便利になったとはいえ、家の中で閉じ込もって子どもの面倒を見ざるを得ない状況にある。昔と同じように母親にすべてを背負わせるような考え方は、今の時代には通用しない」

 普光院さんは「子育てしやすい地域にしたいのであれば、保育は最大の子育て支援」と断言する。まず考えるべきは子どもへの支援と言い、「子どもの生活リズムを壊さないで、年齢に関わらず、友達と遊べる環境を保障するのは子どもに対する支援でもある」と指摘する。
その上で、「子育てに対する耐性や家族の支援などは、それぞれに状況が違う。子育て中の母親の声を聞くと、いっぱいいっぱいな人もいて負荷が大きい。地域に子どもを増やすために子育てしやすい町をつくるのであれば、保育の必要性を広く認めていくことだ。核家族で子育てをしていくのは大変なことなんだよ、という認識を日本社会が持って広く認めていくことが必要。子どもの数が減っている分、一人一人にお金をもっとかけられるはず。少ない子どもを社会で大切に育ててほしい」と望んだ。

 

編集後記
 育休退園は古くて新しい問題だ。育休退園がなくならないのは「子どもは母親と一緒にいたい」「3歳までは母親が家で面倒を見るべきだ」などといった昔からの“3歳児神話”が社会に根強くあることも要因だ、と普光院さんは推測する。育休退園の仕組みが続いている地方にこそ、家庭で子どもの面倒を見るべきだという意識が色濃く残っているのかもしれない。現在は発達心理学上、母親でなくとも、父親や祖父母などの養育者が愛情を持って接すれば問題ないということが分かっているという。
 自身の周りにも子育てに奮闘する母親や父親は大勢いる。「朝、保育園に預ける時に泣かれるとつらい」「夫が出張で不在。ワンオペはきつい」「子どもが言うことを聞かなくて、イライラして子どもに怒るのはしんどい」。SNS上ではそんな書き込みを連日見かける。
 でも、育児は疲れるだけではない。「かわいくて仕方ない」「天使」「親バカかな?」。温かい気持ちになるようなつぶやきを、それ以上に見かける。
 取材では阿南市の例を取り上げたが、県内の自治体ではより条件の悪い所もある。育休退園の仕組みを設けていながら、その言葉を知らない担当者もいた。簡単に「保育士不足」と口にするが、それだけが理由ではないだろう。今後、少子化に伴い施設の利用者が減ることを考えると、受け皿を増やせばいいだけの問題ではない。その後の施設の利活用や人員配置なども見据えて、可能性を探るのが行政の役割ではないか。
 子育てが嫌で保育園に預けるわけではない。子どもがかわいくないわけでもない。子どもと保護者らが心穏やかに過ごせるよう、行政はいま一度、支援の在り方を見直してほしい。

 

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