好評連載の第4回は福岡晃子さんが担当。
【4】チャットモンチーになりたい~第2章~
2002年春。チャットモンチーに加入早々、ライブが決まってしまった。しかも、ドラム不在。いち早くドラマーを見つけるしかなかった。
音楽スタジオにはメンバー募集(略してメンボ)のチラシが所狭しと貼られている。「○タリカが好きなギタリスト募集」「初心者大歓迎」「プロ志向の方希望」などなど、募集する側の夢や希望がつらつらと書かれている。チャットも例に漏れずメンボで募集をかけた。あの頃は個人情報に寛容すぎる時代だったので、自分たちの携帯電話の番号を書いた短冊をちぎりやすいようにチラシの一番下にのれんのようにひらひらさせていたのだった。(いま思えばあれはえっちゃんの携帯番号だった気がする。危ない危ない)
チラシを見て連絡をくれたのは2人だったと思う。そのうちの1人とは、練習スタジオでの面接が決まった。会ったことのない人といきなりスタジオに入る緊張感は半端じゃなかった。現れたのは頭がツンツンの年上の男性。見た目通りのパワフルドラマーだった。意気込みや気合い、人柄の良さから、彼をチャットモンチーの2代目ドラマーとして迎えることになった。テンポの速い曲を得意とする彼とは、その後約1年活動を共にすることになる。
活動の範囲を県外にまで広げたいというバンドの方針と、仕事との兼ね合いがうまくいかず、パワフルドラマーの脱退が決まってしまった。またもドラム不在の危機。今回も県外のライブが決まっていて、1日も早くドラムがたたける人がほしい状況だった。
そんな中、知り合いの先輩にプロ級の男性ドラマーがいるという情報を聞きつけた。早速その人にサポートドラムになってほしいとお願いしてみる。
返ってきた言葉は、「ええけど、チャットでドラムたたくん恥ずかしいけん、お面被ってもええ?」
なるほど…。了承せざるを得なかった。その日からチャットモンチーのバックには大仏とか馬の被り物を被った、非常に怪しげで異常に手数の多いドラマーが圧倒的存在感を放つようになった。
「チャットのライブ見とってもドラムしか目に入ってこんわ」。ライブハウスの店長に言われた。バレとる!このままではまずい。
「こうなったら、初心者でもいいから、やる気のある女の子にメンバーとして入ってもらおう!」
またもメンバーを募る。でも今回はチラシではなく、口コミ作戦でメンバーを探した。チャットでドラムをやりたいと思っていて、意気込みのある女の子。初心者でもやる気さえあれば誰でも可!そんな広いようで狭き門をたたいてきてくれた女子がいた。が、そんな彼女もわずか2カ月で離脱…。こうなるともう自分たちが悪いような気がしてくる。
バンドにとって何が正しくて何が悪いのか?来る日も来る日もそれを考えながら進んだり戻ったりの繰り返し。えっちゃんと2人で他のバンドのライブを見ながら、うらやましさと悔しさで2人で号泣してしまうこともあった。なんで私たちはあんな風に輝けないんだろう?
とにかくドラマーが安定しないバンド、チャットモンチー。しかし、その流れを一気に好転させてくれる救世主がすぐそばにいることに、私たちは間もなく気づいてしまうことになる。…次章に続く。(福岡晃子)