2018年の北島町議補選で当選して同町初の女性議員となり、2期目を務めていた中野真由美さん(50)は今年6月、議員を辞職した。理由は10月にあった衆院選への出馬。立憲民主党の公認候補として徳島2区から立候補した。投開票の結果、自民党の山口俊一さん(71)が11回目の当選を決めた。得票数の差は3万3千票余りあった。中野さんは町議になるまで政治とは無縁だった。障害者施設で働き、子育てをしていた。町議から国政を目指す過程で何を思ったのか、政治の世界で圧倒的少数派である「女性」の立場からどんな風景が見えたのか、聞いた。

インタビューに応じる中野さん=徳島新聞社

―町議を辞めての国政選挙。なぜ出ようと思ったのでしょう。

 町議をしていて感じたのは、国政に持っていかないといけない話がたくさんあるということです。議会で質問をしても、「国の動向を注視していく」という答弁が返ってくることが多い。

 例えば、子どもはぐくみ医療費助成制度。県の補助が出るのは中学校修了までなので、15歳から18歳までの医療費をどう扱うかについては自治体任せになっています。徳島市や小松島市など子どもの多い自治体は中学校修了までしかカバーできていない。自治体だけではできることに限りがある、というのはよく感じていました。

 また、人権問題や女性の問題については法律が現代に合っていません。国会で女性議員がやっていかないと、「男女共同参画」といくら言ったところで変わらない。法整備によって変えていかないといけません。

―しかし、11期目を目指す自民党の山口俊一さんがいる選挙区です。野党第一党が候補者を立てるのも9年ぶり。なかなか厳しい戦いになることが分かっていて、立候補を決断できたのはなぜですか。

 自民党以外の選択肢をつくらないと、という思いはありました。「アリがゾウに立ち向かっていくようなもの」なんて言われたこともあるし、「自分からつぶれにいかなくても」と忠告してくれる人もいました。でも、誰かが出ないといけない。北島町議選の補選に出たときに、党(当時は民進党)の推薦を受けて出て以来、党にはお世話になってきた。党のこれからの選挙を考えて、という部分もあります。

 でも、私みたいなのが出るのはレアですよね。私は高松商業高校出身で、別にお金持ちでもない。学歴も資金もない普通の女性が出る、というのは珍しいんじゃないでしょうか。

―中野さんは北島町議会で初の女性議員で、常に「女性議員」として注目されていたかと思います。今回、立憲としては「ジェンダー平等」を看板政策として掲げていることもあり、女性候補を立てたい、というのがあったようにも見えます。「女性」という属性にまず注目されることをどう思っていますか。

 国会議員、自治体議員ともまだまだ女性が少なく、増やしていかないといけない。女性候補が立てられるなら、できるだけ女性を出していくべきだと思います。議会は住民の声を伝える場。女性の声を代弁する人が必要です。

 ただ、議員と首長はまったく違うと私は考えています。首長は一人しかおらず、執行権を持っている。首長を「女性」というだけで選ぶ、というのはどうでしょう。

 また、私もそうなんですが、「同じ女性だから」ということだけで応援はできないですよね。その人がどういう人なのか、というのが大事。女性も多様でいろんな人がいます。ぶれずに自分の意見を言える、ということが一番大事だと思う。男性社会の中で女性の声を届けることが求められているので。

―政治に関わるようになったのは北島町議になってからですよね。改めて、町議選補選に出たきっかけを教えてください。

 障害者施設で働いていたとき、民進党(当時)の関係者から、同僚に「出ないか」という話がきました。同僚は「私より向いている人がいる」と言って、私に声を掛けた。私は「いやいや、議員になるようなつもりはないから」と言って断ったけれど、立候補の届け出の説明書を読んでいると、面白く思えてきたんですね。それで関係者と話をじっくりして、出ることにした。同居している義理の両親ら家族も理解してくれました。

―地方議員から国政へ、というルートは男性では多いけれど、女性の場合はそれほどでもない。そもそもは地方議員に女性が少ないことも大きく影響していますが。

 国政に出るには資金面の壁があります。家族のこともある。自治体議員だと、家族に何かあればすぐに駆け付けられる。国政に出ると家と離れてしまい、家のことができなくなってしまう。そういうことも影響しているのではないでしょうか。

 来年1月に北島町議選があります。党として、女性候補になれそうな人に「出ませんか」と声を掛けていますが、家族の理解などいろんなハードルがあってすんなりいかない。私はすっと出られたんだな、と改めて思います。今回の衆院選に立候補すると言ったとき、家族からの反応は「じゃじゃ馬だから仕方ないな」みたいな感じでした(笑)。

 ある有権者からは「学歴がなくても、お金がなくても国政選挙に出られる。そういう道をつくってほしい」と言われました。実際に自分が出てみて思ったのは、国会議員というイメージに縛られ過ぎなくてもいいということ。立候補するには「お金をもっていないと」とか「人を集めないと」とか、いろいろ思うかもしれないけれど、言いたいことがあるなら誰が出てもいい。笑う人はいない。出たいと思えば、例えば、考えが合うような政党に相談するとか、一緒にやっていけそうな議員の話を聞いてみるとか、一歩踏み出してしてみればいいと思います。

―ただ、それまで政治に関わらなかった人にとって、政党の事務所の扉を叩くハードルは高くないですか。世間では党派性が出るのを避ける人が多く、「政治的に無色透明がいい」という感覚が広がっているように感じます。

 それは政治に対立構造ばかりを見ているからじゃないでしょうか。今回も、ポスター1枚貼ってもらうにしてもとても気を遣いました。立憲のポスターを貼っているところは、まるで自民と敵対しているかのように見る人がいる。昔の地方選挙では、首長に反対するような人が出ると、集落から白い目で見られるようなことがありましたよね。そういうのを見ていると、政治から距離を置きたくなるんじゃないでしょうか。

 政党や議員の側も、日頃から敷居を低くして、訪ねてきてくれた人と誠実に受け答えするという姿勢が大事なんだと感じます。

 (無所属議員が多い)市町村議会の議員も、もっと政党に所属してもいいと思う。町議選では私も推薦だけ政党からもらって無所属で出たんですが、それでも党の勉強会に参加するなどしてネットワークができました。自治体では予算の問題などでできないことを県政や国政につなげていくことが必要。県議や国会議員と情報共有し、一緒にやっていくには政党や議員同士のネットワークが大事になります。

―中野さん自身は今後はどうする予定ですか。

 (衆院選で得た)4万3千票にどうやって恩返ししていくか。選挙に出るのか、あるいはもっと違うかたちで住民と政治を結んでいく仕事をするのか。今、考えているところです。