7月での“完結”を発表している徳島発ロックバンド・チャットモンチー。6月27日にラストアルバム「誕生」をリリースし、7月21、22の両日にアスティとくしまで開く主催イベント「こなそんフェス2018」がラストライブとなる。橋本絵莉子さん(ギター&ボーカル)と福岡晃子さん(ベース)に完結を選んだ理由や徳島への思いなどを聞いた。3回にわたって紹介する。
◆“完結”へ
―完結を選んだ理由は?
橋本 簡単にいうと、チャットモンチーとしてやる音楽はやりきったというところです。(2人での演奏に加え)打ち込みを使った「チャットモンチー・メカ」という体制が最後なんじゃないかなって思ったのがきっかけです。
福岡 完結を決める前のツアーで、打ち込みを多用した形態でライブをしましたが音源化してなかったので。完結するって決めてから、その形態を作品に残そうと決めました。“完結”を決めたときは、新たな道に向かって進んでいけるという気持ちがうれしくて。進むべき道が見えたねって、日々ぐんぐん向かっている感じなんですけど、いろんな人と思い出を振り返る話をすると、「そういえばこんなことあったね」と思い出すことが増えて、もうすぐ終わるんかという思いになってる。周りによって実感させられてる感じはありますね。
橋本 まだあまり「最後か」って思ってないかもしれません。全力で完結に向かって、その後のことは完結してからゆっくり考えます。
◆ラストアルバム「誕生」
―打ち込みを使った初のCDが、27日にリリースするラストアルバム「誕生」。どんな思いを込めて制作した?
橋本 アルバムのタイトルには「チャットモンチーは完結するけど、またここからいろんなことが始まっていく」っていう意味が込められています。
福岡 打ち込みと生音をうまく混ぜたくて、あまり電子音ぽくないものも入れたいなと思いました。機械だけど人間が扱っている、共存している感じを目指しました。
―歌詞には「未来」をイメージさせる言葉が多い。あえてそういう言葉を選んだ?
橋本 すごく意識したわけではなかったんですけど、全7曲集まって聞いてみたら、これまでのことを振り返っているというよりも、これからのことを歌っているようなものが多くなったなって思います。音も含めて。
福岡 そうですね。歌詞を書くときはデビュー前から現在までのチャットモンチーをまとめた感じのことを書きたいと思って意識したけど、結果的に、今までチャットモンチーをやってきたことが未来につながるっていう明日を見たような歌詞になったと思います。
◆収録曲に高橋久美子さん作詞「砂鉄」
―収録曲「砂鉄」は元ドラマーの高橋久美子さん(2011年脱退)の歌詞に曲をつけた。歌詞を読んでどう感じた?
橋本 今のチャットモンチーへのメッセージという感じで、すごく感動しました。一緒にいても感じているような「うん、分かる!」ってなるような、うまく表せないようなことを歌詞で表してくれたからうれしかったです。メロディーに関しては、くみこん(高橋さん)がいたころと変わらないテンションで書きました。迷うことなくするすると。
―2人から高橋さんに歌詞を書いてほしいと依頼した理由は?
橋本 くみこんがいたときに3人で作った曲がすごくよくて、本当はアルバムに入れたかったんですけど、デモ音源が見当たらず、その曲を再現・アレンジし直すことができなくって。それなら今のくみこんに新しい歌詞を書いてもらおうって、お願いしました。
―高橋さんのエッセー集「いっぴき」(ちくま文庫)では橋本さんが担当した解説文に「くみこんの歌詞に一番ぴったりなメロディーをのせられるのは私」とある。高橋さんはどんな存在?
橋本 その一文は最後まで省くか省かないか悩んでいた部分でもあったんですけど。くみこんの歌詞歴もチャットが一番長いというのもあるし特別です。最初はバンドのメンバーという感じで始まったけど、今は…何て言うんですかね、一言では言い表せない。尊敬もあるし、会ったら親戚みたいなところもあるし、一つ年上だからお姉さんなところもある…不思議ですね。
福岡 元々は大学の先輩だったところからメンバーになってもらって、3人でデビュー当時の何も分からない時期を過ごした、すごく大きくて特別な存在です。(高橋さんが)抜けた後も、「2人で頑張ろう」と思わせてくれた。それくらい、脱退は私たちにとって大きな出来事で、それをエネルギーに変えることができました。
◆今までを振り返って
―アマチュア時代から精力的に全国でライブをして、デビューの夢を実現した。振り返って印象に残っていることは?
福岡 いろいろありすぎて…。何だろう?
橋本 あれだよね、デビューできるって聞いて「だまされてないかな」って最初疑ってたことを今思い出しました(笑)。今までのライブで見たことないような人たちが見に来るようになって…。
福岡 ピンクのズボンを履いた男の人とか(笑)、徳島には売ってない感じの服の人がいっぱい見に来て…、後にレコード会社の人たちと分かるんですけど。「怖くないからね」って言われるのが逆に怖い、みたいな(笑)。
橋本 めっちゃ怖かった(笑)。
福岡 事務所が決まってからは、契約の話をしたいからご両親に会わせてと言われて、両親も戸惑って(笑)。
橋本 (事務所の人は)家族に心配かけてると思って気にしてくれてたんやろうね。
福岡 そう。でもその手厚さが逆に「ほんまかな?」って。だから、自分たちではデビュー直前まで周りの人に言わなかったですね。本当に半々だと思ってたので「ウソ」って言われても大丈夫なように。
―デビューして環境は変わった?
福岡 ガラッと変わりましたね。デビューしたばかりのころは私はまだ大学生で、飛行機にそれほど乗ったことはないし、東京ではタクシーで分刻みで移動して取材って感じだったので、一生分の飛行機とタクシーに乗ったと思いました。毎回楽器も持っていってたので、飛行機に乗るたびに、荷物どこに置こうって大変でした。