徳島市は、新町西地区再開発事業からの撤退に伴い、地権者でつくる再開発組合に支払った和解金など約4億6千万円について、前市長の遠藤彰良氏に対して損害賠償請求訴訟を起こす議案を市議会12月定例会に提出している。可決されるか否かが注目される中、6日の市議会代表質問で、玉野勝彦氏(自民)が遠藤前市長への請求に至る詳細なプロセスや法的根拠について問うた。市側は、顧問弁護士と十分に協議した上での行為と強調し、徳島地裁が市に3億5千万円余りの賠償を命じた判決で事業撤退後の組合への対応が「信頼に反する違法な行為」と認定されたのを踏まえ、その責任は遠藤前市長にあるとする従来の見解を繰り返した。内藤佐和子市長は、自治体が債権を有していることを前提とした地方自治法の条文等を引用しながら「(遠藤前市長に)請求を行わないことは行政責任を果たさないということになり、私の責任問題として損害賠償責任を負いかねないことになる」との主張を展開した。和解金について、遠藤前市長側は「適法行為に伴う損失補償で、市が負担すべきだ」と主張し、組合に対する補償は公金を支出することになるため、「額を司法判断に委ねることなく決めるのは難しかった」との見解を示している。

 質問と答弁の要旨は次の通り。

訴訟に至る経緯などを質問した玉野勝彦氏(自民)=6日午前、徳島市議会議場

玉野氏「リーガルチェックを経た上で遠藤氏に請求したのか」

玉野氏 前回の定例会同様、市長から「事前打ち合わせについては必要ない」ということだったので、通告のみしている。正確な答弁を頂くためにも(打ち合わせは)必要なものであると理解しているが、市長の意向だ。

 本市が過去に前職、現職にかかわらず市長や副市長等の幹部職員、あるいは一般職員に対してこのような損害賠償の裁判を起こしたことがあるのか、お答えください。徳島新聞の「読者の手紙」に「前徳島市長を提訴は不可解」と題して、「一市民となった遠藤氏を提訴して何の利益があるのか。遠藤氏への嫌がらせとしか思えない。こんな裁判を起こそうという徳島市の意図が分からない。最終判断をしたのが遠藤氏だったとしても、市民が選んだ。市民が選んだ市長の行為に対して損害賠償まで求める必要があるのか。そんな市に住んでいることがとても悲しい」という市民の意見が述べられていた。これは多数の市民に共通する思いだと思う。何を目的とした裁判なのか。これだけの巨額な請求をして、遠藤氏に支払い能力があることが調査できているのか疑問だ。そこで伺う。監査委員から監査請求結果として、「請求人が主張している求償権について判例上の根拠は存在しないと解するのが相当である。提出された資料から求償権や損害賠償請求権の適否について、明確な見解を示すことは困難」と指摘され、「遠藤氏に対する損害賠償請求等の有無、範囲等を精査をすべきだと考える」との意見が出ている。

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 その後、8日という短期間で遠藤氏に対して納付書とともに通知書を送付している。顧問弁護士等にしっかりとリーガルチェックを行った上で送付したのか、お答えください。かなり複雑な法的根拠が求められると想像できる金額の請求だ。複数の専門家に相談したのかについてもお答えください。弁護士に相談しているのであれば、裁判になった場合に裁判の勝算について弁護士からどのような意見があったのか。また、このような請求を行う場合の必要な行政手続き及び意思決定してから納付書等の送付までにかかる標準的期間についても、お答えください。

 これに関連して、この納付書および通知書の送付後、これまでに記者会見の市長答弁で「現在、相談をしている」との答弁があったようだが、送付後誰に何をご相談されていたのか、お答えください。次に、この請求についての法的根拠についても伺う。民法709条によるものなのか、それとも国家賠償法1条2項によるものなのか、お答えください。

 遠藤氏は再開発事業の白紙撤回を公約として市長選で当選した。その後、公約を実現すべく、まずは市全体で再開発事業の白紙撤回および再開発事業からの撤退を施策決定し、対外的にもこの施策を実行していくことを表明した上で、公約を順守する市長として当然の行動をしたものであり、その判断に関しては最高裁判所においても正当であるとされている。遠藤氏より、再開発組合に対してではなく、市に対してどのような不法行為があって損害を与えたのか、お答えください。また遠藤氏に故意または重大な過失行為があったのか、お答えください。

 以上の内容について、「裁判を予定しているので答弁を控える」などの答弁をされ、賛成多数になるようなことがあれば議会は手放しで承認することになる。そのような判断を徳島市議会として到底できないということを理解いただき、丁寧に答弁いただくよう申し添える。

都市建設部長「弁護士と十分、協議した」

北岡武・都市建設部長兼理事 「過去に副市長、一般職員らを対象に裁判を起こした例はあるか」という質問に対して、私においては承知をしていない。監査結果において、(遠藤氏に対する損害賠償請求等の)有無、範囲を精査すべきというようなことが結果の中で示された。今回、遠藤前市長に請求の通知を送らせていただいたことについては、当然ながら弁護士と十分に協議、相談をして対応させていただいた。「複数の弁護士に確認したか」であるが、これについては顧問弁護士に聞いたということだ。それから「弁護士の意見とはどういうものだったか」ということだが、これは十分確認をした。今回、損害賠償の請求に至った根拠となったのは損害賠償請求訴訟の中にある一審判決の判決文で「市は違法行為を働いた」「不法行為責任を免れない」という結果が出ている。これについては弁護士と十分協議し、また監査結果の中でも市のそうした判断に矛盾はなく、否定するものではない、と監査結果を頂いた。そういったことから今回、遠藤前市長に損害賠償請求をさせていただいた。これについても弁護士と十分協議、相談して出した結論だ。

 「意見を提出するまでの標準日数」だが、これについては特に弁護士とも協議したが、こうした日数というのは議論に出ず、承知していない。続いて「通知書を送付後、誰に何を相談したのか」だが、送付をしたが、当然ながら弁護士と常に内容、対応については継続して協議を行っている。「請求の法的根拠は国賠法か民法か」ということで質問を頂いた。これについては実際に相手が損害を受けたもの、被害を被ったものについては国賠法の対象になると判断をしている。一方、相手が損害を受けておらず、市が被害を被ったことについては民法の対象になると判断をしている。しかし、今回は国賠法であれ民法であれ、得られる結果は変わらないので、どちらかに限定する必要はないと弁護士からも言われている。

 「市にどのような不法行為が生じていたのか」という質問については、損害賠償請求訴訟の中で一審判決が出ている通り、市が違法行為をはたらき、不法行為責任を免れないという判決が出ている。その前に出ている訴訟、権利変換不認可取り消し訴訟。この中でも、判決の中で「信頼関係が不当に破壊されれば市も賠償責任を負うことがある」とはっきり書かれている。取り消し訴訟は損害賠償請求訴訟より前に行われた。当然、結果を本市は理解していたはずだ。組合員に代替案なり補償なり、こういったことと真摯(しんし)に向き合って相手が納得するように努力することが求められていたし、そのことは事前に分かっていた。判決文の中でも明らかになっている。にもかかわらず、代替案を示さず、補償についても金額が出せないということで、最終的に組合員の方たちご自身が訴訟を起こすという結果になったわけだ。本市としては判決文に書かれている通り、そういったことがすべての根拠であるということで、市は違法行為を働き、不法行為を免れないという結論に対しては、その原因は遠藤前市長にあると考えている。

 最後に、「重大な過失行為があったのか」という問いだったかと思うが、これについては先ほど述べた通り、権利変換不認可取り消し訴訟の中で既に、信頼関係が不当に破壊されれば損害賠償責任を負う可能性がある、と。一審でも二審でも同様の内容が書かれている。昭和56年の最高裁判決でも同じようなことが判決文として出ている。であれば当然、何もしなければ行政の違法行為であり、不法行為責任を問われることが明らかだったわけだ。つまり、これが分かっているのに何もしなかった。これが故意に当たると判断している。

内藤市長「請求を行わないと私が損害賠償責任を負いかねない」 債権を有することを前提にした地方自治法の条例等を引用し

答弁する内藤市長=6日午前、徳島市議会議場

内藤佐和子市長 まず、「(質問と答弁の)擦り合わせは必要ない」とは言っていないので訂正する。「必要なものには応じる」と明言している。

 都市建設部長からの答弁に加え、仮に徳島市が訴訟の提起をしなかった場合、地方公共団体が有する債権の放棄や免除について、平成16年4月23日の最高裁判決において地方公共団体が有する債権の管理について定める地方自治法240条および施行令171条から171条の7の規定により、客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず、原則として地方自治体の長にその行使、または不行使についての裁量はない、とされている。つまり、首長である徳島市長である私には裁量はなく、理由もなく放置したり免除したりすることは許されず、請求を行わないことは行政責任を果たさないということになり、私の責任問題として損害賠償責任を負いかねないことになると考える。

玉野氏「遠藤氏がもし支払うと、徳島市は補償に関してゼロ負担に」

玉野氏 遠藤氏および市の判断として、再開発事業の白紙撤回、再開発事業からの撤退について、再開発組合が権利変換計画不認可処分取り消し等請求事件の裁判を提起し、最高裁において遠藤氏および市の判断として、不認可は違法ではない、適法だと決定してこれが確定している。

 このように適法であるとの判断が行われた場合でも、市は再開発組合に生じた損害について適切な補償をする必要があったことを否定できないと思うが、内藤市政において、再開発組合から提起された損害賠償請求訴訟の高松高裁控訴審において和解し、再開発組合に支払った和解金4億1千万円は実質的にこの補償金であると認められる。

 遠藤氏の市に対する不法行為だとするためには、故意過失の違法行為と市に損害を発生させたという要件が必要になる。内藤市政は高松高裁控訴審での和解により再開発組合に生じた損害を実質的な補償金として内藤市政の判断で支払ったのであるから、損害などは発生していないという判断をしていることになる。そうなれば遠藤氏に対して不法行為責任の追及の条件を満たしてないと思う。このことについてご説明ください。

 また、遠藤氏から賠償金の支払いを受けた場合、市は原市政から遠藤市政にかけて継続していた本事業に対して全く補償金を支払うことなく、ゼロ負担になる。当初、再開発組合から要求のあった補償金は6億5448万円であり、遠藤氏はこれを市の判断で請求額のまま支払うことができないことを再開発組合に伝え、司法の場で決定してもらう必要があることを伝えている。その上で再開発組合から損害賠償請求訴訟が提起され、徳島地裁判決は市に3億5878万円の支払いを命じた。しかし、内藤市政はそれに「不満」という判断をして控訴し、内藤市政の判断で和解し、4億1000万という金額を司法判断で確定し、再開発組合に支払ったという経緯を見ても、遠藤氏に対して4億1000万円に加え徳島市の弁護士費用まで請求するということは狂気と言わざるを得ない。

 内藤市長はこのような経緯をご存知の上でこのたびの定例会にも提訴に関する議案を上程されていると思う。市民が納得する説明を市長自らすべきだ。ご説明をお願いする。

第2副市長「遠藤前市長個人の責任は大きい」

折野好信第2副市長 遠藤前市長が新町西地区の再開発事業から撤退したことについて、それが市の裁量権の範囲で行った行為として否定するつもりはない。ただ、昭和56年1月27日の最高裁判決では「補償等の措置を講ずることなく、地方公共団体が定めた一定内容の継続的な施策を変更した地方公共団体は、それがやむを得ない客観的事情によるものでない限り不法行為責任を免れない」とあり、地方公共団体が関与する継続的事業の地方公共団体の責任についての先例となっている。このことから地方公共団体が継続的な事業から撤退する際には具体的な代替案や補償を提示しなければならないことになる。

 しかし、代替案について遠藤前市長は再開発組合と4回面談しているが、「案は持っているが言えない」「白紙撤回するという公約と次にどうするかという話とは一緒に議論すべきではない」「白紙撤回の交換条件的な案は出せない」などと述べており、代替案があると明言していたにもかかわらず、一方的に事業から撤退することのみを繰り返している。

 補償についても再開発組合から二つの訴訟を起こされたうちの一つ、不認可処分取り消し訴訟の判決文で、遠藤前市長は被告に責任のあるものは補償する意向を示していると記載され、遠藤前市長自身も「法的責任のあるものについては誠意を持って対応したい」と言っていたが、結局最後まで補償の提示をしないどころか、損害賠償請求訴訟の中では一切賠償金を支払わないことを主張していた。その結果、もう一つの訴訟である損害賠償請求訴訟の一審判決で、本件政策変更に当たって再開発組合に対して具体的な代替事業や補償の提示を行っておらず、代償的措置を講じたと認めることはできないとされ、被告による本件政策変更および本件不認可処分は、かかる信頼に反する違法な行為であると指摘されている。こうした不法行為については、遠藤前市長本人の意向が強く働いていることは明らかであるし、また地方自治法などにより市長には広範な権限が与えられていることを踏まえれば、遠藤前市長個人の責任は大きいものと考えている。本来であれば遠藤前市長は継続的事業から撤退する際には、具体的な事業の代替案や補償をしなければ徳島市が不法行為責任を負うといった事態が起こらないよう対処すべきであったと考えている。

 徳島市が遠藤前市長に対して求償権ないし損害賠償請求権を有しているという見解に明らかな矛盾はなく否定するものでないとする監査委員のご判断、およびその後に通知した遠藤前市長への請求について遠藤前市長が「支払う意思はない」と記者会見および通知により明言されたことなどから、和解は現市長の判断で行ったが、徳島市は債権を回収するには訴訟するしかなく、本議会に遠藤前市長の訴訟の提起を提出させていただいた。

内藤市長「先ほど説明した通り」

内藤市長 損害金請求についての私の説明ということだが、先ほど初問で説明した通りだ。

玉野氏「質問に対する十分な答弁はなかった」

玉野氏 質問に対し、十分な答弁は頂けなかった。前市長に対するこのような裁判提起は、市民が許すものではないと申し上げておく。先月29日、「内藤市長リコール住民投票の会」による会見があり、令和4年1月27日から署名活動が始まるとのことだった。受任者も約1万人の方が名乗りを上げているという。これだけの市民が内藤市政に対する不信、不満あるいは不可解さを膨らませていることを内藤市長には十分にご理解いただきたいと思う。

 この日、黒田達哉氏(徳島活性会議)も、遠藤前市長に対する損害賠償請求をするに至った経緯について質問。理事者側は権利変換不認可処分取り消し請求訴訟からこれまでの経緯を振り返り、従来の主張を繰り返した。