7日の徳島市議会本会議でも前日に続いて、市が前市長の遠藤彰良氏に約4億6千万円の損害賠償を求める訴訟の提起に関する議案について論戦があった。代表質問で古田美知代氏(共産)は、訴訟関連費用として一般会計補正予算案に計上されている1559万6000円の内訳をただしたほか、「きちんと手続きを踏んで進めてきた遠藤前市長への訴訟はきっぱりやめるべきだ」と迫った。北岡武・都市建設部長兼理事は内訳について「弁護士への着手金1420万円、印紙代139万6000円」と説明。損害賠償請求の可能性を探ることを「健全で自律性の高い自治体の自助努力」と表現し、訴訟提起の正当性を主張した。また、古田氏は11月20日付の徳島新聞「鳴潮」を引用した上で、内藤佐和子市長に対して「(敗訴した場合は)裁判関係費用の責任を市長が取る覚悟があるのか」と質問。内藤市長は「仮定の意見についての答弁は控える」とのみ答えた。議員と理事者側が事前に質問と答弁の打ち合わせをする「擦り合わせ」についても、やりとりがあった。

 質問と答弁の要旨は次の通り。

質問をする古田氏=7日午前、徳島市議会議場

古田氏「市長は自民、共産との擦り合わせに応じない。謝罪と撤回を」「訴訟費用1559万円の内訳は?顧問弁護士は誰?」

古田美知代氏 市議団を代表して質問する。質問に先立ち、市長に申し上げることがある。先の9月議会閉会日に、長である市長の言葉とは思えない発言があった。「自民党市議団、共産党市議団とは擦り合わせには応じられないと判断した」との発言だ。これは本党に対する差別発言だ。市長には謝罪し、撤回するよう強く求める。それでは質問に入る。

 遠藤彰良前市長に対する損害賠償請求訴訟について伺う。新町西地区再開発事業を巡って支払った和解金など約4億6千万円について、遠藤前市長に損害賠償を求める訴訟を起こす方針を固め、訴訟費用1559万6000円を今議会に提出している。徳島市は新町西地区市街地再開発組合に対して事業変更案や補償の提案を行わなかったことが市長としての不法行為責任を免れないとして、遠藤前市長に対して約4億6千万円の損害賠償を求める訴訟をしようとしている。このことについて、遠藤前市長側は「事業からの撤退は裁判で適法と認められており、それに伴う損失補償は事業主体の市が負担すべきだ」と指摘し、組合への支払いの本質は「適法行為に伴う損失補償であり、不法行為による損害賠償ではない」と主張して損害賠償責任を負うことはあり得ないとしています。その通りと考える。

 玉野勝彦議員も引用したが、最近11月18日付徳島新聞の「読者の手紙」欄に、「前徳島市長提訴は不可解」と題して「大変な労力と高額な費用を使って一市民となった遠藤氏を提訴して何の利益があるのか、遠藤氏への嫌がらせとしか思えない。そんな市に住んでいることがとても悲しい」という内容の市民の意見が述べられていた。これは多くの市民に共通の思いだ。

 そこで伺う。今議会に訴訟費用として計上されている1559万6000円の内訳について、印紙代などの実務費用はいくらか、弁護士着手金の費用とその根拠など明確にご答弁ください。損害賠償請求訴訟提起の可否について、複数の弁護士に聞いたのか。弁護士はどこの弁護士会に属しているか。名前とどういう意見だったのかもお答えください。

都市建設部長「弁護士着手金1420万円、印紙代139万円」

北岡武・都市建設部長兼理事  内訳だが、着手金は1420万円、印紙代は139万6000円となっている。「複数の弁護士に聞いたのか」ということだが、私の方で相談をいつもしている弁護士は京町法律事務所の藤原弁護士。どの弁護士会かについては承知をしていない。

答弁する内藤市長=7日午前、徳島市議会議場

内藤市長「必要な擦り合わせはすると話した。理事者をこれ以上いじめるのはやめていただきたい」

内藤佐和子市長 冒頭の発言に対し、説明する。本議会の前にも「擦り合わせをしてほしい」との依頼があったが、必要なものは擦り合わせをするとともに、データの説明などは積極的に行わせていただくとの話をした。質問に対して答弁の要旨を理事者側からは提供すると申し上げたが、「答弁の全文でないと意味がない」と突き返された。自分たちは質問は全て見せないが、理事者側からの答弁は全部見せろ、というのは横暴でフェアでないと考える。議員として理事者をこれ以上いじめるのはやめていただきたいと、行政の長として切に切にお願いする。

古田氏「訴訟はきっぱり撤回すべきだ」

古田氏 明確な答弁はなかった。遠藤前市長の代理人弁護士は、7月2日に内藤市長が文書で遠藤前市長に求めたことに関して、9月1日付で通知書を内藤市長宛に送っている。内容は次の通り。

◇◇◇
 上記通知は遠藤前市長に対する請求の法的根拠や請求額算定の法律の明示を欠いており、このような粗略と思える内容の文章をもって約4億5878万円もの請求を、しかも納付書を添付して個人に郵送するという非常識な手段で送り付けた。いかなる理由をもってしても遠藤前市長が徳島市に対して不法行為責任を負うなどということはあり得ない。

 平成28年3月27日に行われた徳島市長選挙は再開発事業を継続するか廃止するかが争点となり、遠藤前市長と同じく再開発事業の白紙撤回を公約とした次点候補者との得票数を合わせれば、両者の得票数は有効得票総数の約73%に及んだ。このような再開発事業白紙撤回の圧倒的な民意に基づいて、徳島市は同年6月、再開発事業から撤退するとしてその権利変換計画を不認可処分とした。

 遠藤前市長は、撤退する場合はこれによって組合に生じた法的根拠のある損害については補償する旨を明言するとともに、新町西地区について新しい街づくりを行っていく旨を表明し、複数回にわたり組合の理解を求めた。しかし、組合に対して再開発事業の撤退を前提とする説明を行っても、撤退そのものを受け入れない組合との間で代替え事業案や補償額について提案して合意を得る、そういったことは不可能な状況であったことはご承知の通りだ。また、再開発事業施行区域内においては都市再開発法により複雑な規制がなされており、組合が自ら同法の制約を解かなければ新たな内容の事業計画に変更することはできず、その見通しが全くない状況の中で徳島市として変更ないし代替え事業について具体的な提案を行い、同意に至ることなどできるはずもなかった。

 さらに補償問題については、組合が提起した損害賠償請求訴訟での請求額は6億5千万円余りであったのに対し、徳島地裁が賠償を命じたのは3億5千万円余りにとどまったことからも明らかな通り、組合の請求は過大であって容易に賠償金額についての合意が形成される状況ではなかったことに加え、補償金は公金をもって行うことになるため組合との安易な妥協は許されず、その補償金額いかんは司法に委ねて公正かつ合理的な判断を仰がざるを得ないと考えて、裁判による解決の方法を選択したのも至極当然だった。それらの事情、背景、理由の下で徳島市が不認可処分を行うに当たり、組合に対して代替え事業や補償について具体的に提案し、合意の形成に至らなかったとしても、このことをもって遠藤前市長に何らかの責任があるということなどできるはずがない。
◇◇◇

 また、市議会議員宛てで、ある弁護士(議場では実名で発言)から次のような申し入れ書がきた。

◇◇◇
 内藤市長は勝訴の見込みについても、徳島地裁の一審判決のみを根拠としているようだが、その判決が妥当かは大いに疑問がある。再開発組合が市を相手とする訴訟において、徳島地裁が市の不法行為責任を認め、双方が高松高裁に控訴の上、高裁で市が組合に対しては和解金を支払うことで和解が成立した。ここで重要なことは、市の不法行為責任を認めたのはあくまで一審の徳島地裁だけであるということだ。高裁での和解手続きにおいて成立した裁判上の和解の和解条項本文の文言で、市が組合に対して支払う金員は和解金となっており、損害賠償金となっていない点は極めて重要だ。市が支払う金員が純然たる損害賠償金であれば、和解金でなく損害賠償金としてとの文言が用いられるはずだ。高裁の裁判官の判断は、市が組合に対して支払うのは純然たる損害賠償金ではなく、再開発計画から撤退を行った、最高裁でも適法であることが確定している前市長の行政行為による損失補償、憲法29条であることが念頭にあったことが合理的に推測される。従って、この和解金については求償権は発生しないと考えるべきだ。
◇◇◇

 そこで伺う。手続きを踏んできちんと進めてきた遠藤前市長に対する約4億6千万円もの損害賠償訴訟はきっぱり撤回すべきだと考える。良識あるご答弁を求める。

古田氏「市が敗訴したら、裁判費用の責任を内藤市長が取る覚悟はあるか?」

古田氏 徳島新聞11月20日付「鳴潮」は「徳島市が、遠藤彰良前市長に約4億6千万円の損害賠償を求める訴訟を起こすという」から始まる。最後の章では「前市長を提訴するに当たり、一つ約束してほしい。裁判である。市側が敗訴する可能性もあろう。その際、関係費用は全て内藤市長の負担とする。相手は今や一民間人だ。そのぐらいの覚悟を見せてもらいたい」とまとめている。そこで伺う。市が敗訴した場合、裁判関係費用の責任を内藤市長が取る覚悟があるのか。市長、明確にお答えください。

都市建設部長「健全で自律性の高い自治体として『自助努力』が絶対に必要」

北岡都市建設部長 遠藤前市長は「法的根拠のあるものは補償する」と言った。それから複数回、組合の方たちと協議をした。組合の方たちと協議をする際に「代替え案がある」と言っていた。組合員の方たちは「白紙撤回、今の計画をまるっきり変えるなら新しい案を出して欲しい」と何度も遠藤前市長に訴えていた。しかし、遠藤前市長は「案はあるけど出せない」と。最終的にその案を見せることはなかった。また「法的に根拠のあるものを補償する」と言っていたが、それであれば自らがかかった費用、それが幾らなのか、そういったことを組合の方たちから資料を取り寄せ、数字を精査し、どれが補償額としてふさわしいのか、その精査を自らすべきであったし、その責任があったと思う。なぜなら遠藤前市長は白紙撤回を公約に掲げて当選した。ということは、その政策変更、白紙撤回についての責任は当然ながら遠藤前市長にある、ということだ。であるなら、遠藤前市長の責任において補償額の算定、そういったことも含めて組合の方たちが納得できるような代替え案の提示も含めて自ら行うべきだったと考える。

 遠藤前市長は「代替案の協議をした」「法的に責任あるものは補償する」と言っているが、一審の判決文では「代償的措置を講じたとは言えない」とはっきり書かれている。何もやってないということは、もうその判決文で明らかになっている。補償するというなら、どうして自分でその金額を算定しようとしないのか。相手が訴訟しているから話にならない、ではなくて、その原因をつくったのなら自らの責任として感じるのなら、そうすべきであったのではないか。

 今回は、遠藤前市長のそういう対応をしなかったということが一審判決ではっきりと違法であり、不法行為責任を免れない、ということが示された。法を順守すべき自治体が違法行為を働いた。そして、不法行為責任を免れなかった。その結果、賠償金の支払いを命じられた。このことについて自治体として何もしなくていいのか。法的に違法行為と言われたことに対して、自治体は何もしなくていいのか。健全で高い自律性を持つ自治体として、公金支出について求償の可能性、もしくは損害賠償の可能性があるのかないのか、そういうことを含めて自らが検討検証する、そういった自助努力が絶対必要だ。自治体としてどこに問題があって、何が原因で、どうすべきだったのか。そういうことを自らしっかり検証して答えを導き出す。それが一番大切なことではないか。

 昨日の私の答弁と重なるが、本市としては監査の判断を踏まえ、損害賠償の請求をした以上、地方自治法に基づき、債権について取り立てに関しては行政としてあらゆる手を尽くす義務がある。損害賠償請求にとどまらず、本議会に訴訟を提起し、可能な限りの対策を講じることとしたものだ。すなわち、法に基づく請求を行うことで行政責任を果たそうとしているわけなので、「きっぱりやめる」のではなく「きっちり手続きを踏む」ということだ。

内藤市長「仮定の意見への答弁は控える」

内藤市長 市が敗訴した場合、市長個人が費用を払う覚悟はあるのかとの質問だが、仮定の意見についての答弁は控える。

古田氏「市長、議案に賛成する議員の責任は大きい」

古田氏
 (前出の)弁護士は次のように述べている。「4億6千万円の請求は印紙代諸経費が200万円以上、依頼する弁護士への着手金は1千万円を大幅に超えると思われる。すべて税金だ。しかし、仮に万が一、市の主張が認められても4億6千万円の回収の可能性はほとんどないと言えるだろう。市は回収可能性の検討を具体的に行ったのか。多額の税金を用いる異例の高額訴訟の費用対効果をどのように検討したのか。民事訴訟提起の場合、費用対効果の検討は必須であり、不可欠である。市の請求は前市長に対する嫌がらせ訴訟あるいはどう喝訴訟と評すべきであり、訴訟すること自体を自己目的化している」。本当に道理に合わない訴訟は撤回すべきと強く求めておく。訴訟を提起した市長の責任はもとより、閉会日に賛否が問われるが、賛成した議員にも大きな責任があることを考えていただきたい。