不登校や引きこもりの人らを支援するNPO法人「フリースクール阿波風月庵」(徳島市)が今年3月、設立から20年の節目を迎えた。これを記念して、引きこもり当事者らの支援冊子を作成し、無料相談サイトも開設した。団体を立ち上げた林三知男理事長(70)は「引きこもりの家族や支援者らに、本人の気持ちや戸惑いを分かってほしい。動けば応えてくれる人は必ずいるので、当事者には自分から一歩踏み出してもらえれば」と呼び掛けている。

設立の経緯を説明する林さん
=徳島市川内町のフリースクール風月庵

 

引きこもり経験を生かしてサポート側に

 自身も不登校の経験がある林さん。高校を卒業後、県外の大学に進学したが、1年間で1週間ほどしか通わなかったという。大学を中退後、県内外で職を転々とし、就いた職種は30以上。40代半ばで2度目の離婚を経験し、子育てや仕事など私生活に悩んでいた頃、友人の影響で教会に通うように。牧師が相談に乗っている様子を見てカウンセリングや心理学に興味を持ち、勉強を始めた。49歳で1年かけて全国のフリースクールを回り、50歳で徳島にフリースクールを開いた。

 当時、県内にフリースクールはなかったが、林さんには「引きこもりから立ち直って生きてこられた」という自負があった。県内初のフリースクールとして徐々に知名度を上げ、2005年にNPO法人化。訪問相談や居場所づくり、他団体や親たちとの交流も積極的に行いながら運営してきた。

フリースクール内の様子。利用者はおしゃべりしたり本を読んだり、思い思いに過ごす。

 

開設20年 不登校・引きこもり支援の変化

 開設から10年目あたりはスタッフの数も多く、活動の全盛期だったと振り返るが、最近は支援の難しさを感じているという。風月庵では保護者らが相談に訪れた場合、家族会への参加を勧め、各家庭に出向いて相談を行う。引きこもり経験のあるスタッフらも一緒に訪問し、保護者と交流する。そこに本人が加わるようになり、希望すれば風月庵に来てもらうという流れだが、ここ数年は訪問から先に進まないことが増えた。林さんは「昔は家で暴力を振るう子もいたりして、親はなんとかしようと熱心だった。今は暴れる子はいない。本人は家に引きこもり、家族とすら口を利かない状況にもかかわらず、外に迷惑を掛けていないので『うちは問題ない』と言う親もいる。この状態で本人が動くことはまずない。外からの働き掛けが必要」と周囲の積極的な支援を求める。

 県外には住み込み型の自立支援施設があるが、施設を出て自宅に戻るとまた引きこもりになってしまうケースもあるという。「風月庵は実家で生まれ変わる、育て直すというのが理念。親の考え方が変わらない限り、子どもは変わらない。就職したらどうにかなると考えている親もいるが、本人が自分の考え方を見つめ、社会との接し方を学ばないといけない」と指摘する。
 

小中学校の不登校者数は過去最多 「時代がそこに向かっている」

 林さんがフリースクールを開いた当初と比べ、公的支援や民間の相談先は増えた。社会の受け止め方も変わってきている。今年10月に文科省が発表した調査では、小中学校の不登校者数は19万6127人と過去最多だった。不登校が増えたのが一概に悪いことではないと言う林さんは「学校に行ってみんなと同じように教育を受ける日本のスタイルが合わない子もいる。海外の高校や大学に行って、日本に戻ってくる子もいる」と指摘する。最近では「学校に行かなくてもいい」と言う親もいるという。「親は不登校だと学力が心配なので塾には通わせようとするが、いったん休養させることが必要。休んでも挽回できる子はできる。学力のことを言っているうちは不登校がなくならないのではないか。不登校が増えていること自体は心配だが、大事なのはその子に合った生き方を見つけること」と訴える。

 

「不登校・引きこもりを明るく見守りたい」 支援冊子と無料相談サイト作成

完成した冊子を手に持つ林さん
=徳島市川内町のフリースクール阿波風月庵

 この20年で風月庵が受けた相談は400件以上。100家庭に長期的な支援を行い、直接関わった子どもは50人になる。引きこもりからその後の支援も継続して行っているため、10年以上関わっている家庭もある。「不登校や引きこもりを明るく見守りたい」と、支援冊子にはこうした経験などをまとめた。過去の会報誌とブログから抜粋し、不登校・引きこもりの初期・中期・長期と段階ごとの対応へのアドバイスや、スタッフらの体験談、支援者へのお願いなどをA4判114ページにわたって載せている。支援に役立ててもらいたいと、希望者には無料で配布している。
 

徳島県内在住者を対象にした無料相談サイト

 当事者や家族らが動き出すきっかけにしてほしいと、県内限定の不登校・引きこもり無料相談サイトも作成した。サイトには「息子と意思が通じない」「学校に行って勉強できるようにしてあげたい」などと、具体的な相談例や引きこもり体験談を掲載。小・中・高校・大学の不登校や引きこもりを対象に、県内在住の当事者や家族、支援者からの相談に無料で対応する。
 

 支援冊子には「当事者の言葉にならない言葉を盛り込んだ」という林さん。「引きこもりやその家族に本人の気持ちや戸惑いを分かってほしいとの思いで冊子を作った。社会との接触を避けているため、支援を受けられないままの人や引きこもりの自覚がない人もいる。昔と違って公的支援も増えた。動けば応えてくれる人が必ずいる。自分から一歩踏み出してほしい」と呼び掛けた。

冊子の問い合わせは林さん(電話 080-6383-7984)まで
無料相談サイトはこちら⇨https://tokusou.halfmoon.jp/