この写真は1966(昭和41)年に小松島市の南小松島駅で撮影された。未舗装の駅前広場に止められたオートバイの側車は、キャビンに窓があり、奥の1台には広告看板が取り付けられている。
これは戦後の交通混乱のさなか、東京都新宿区で乗客を運ぶ簡易な乗り物として誕生し、全国に普及した「輪タク(自転車タクシー)」を50年代に動力化、オートバイに変更した車両で、全盛期には全国で2万台近く、県内でも約40台が走っていた。
乗客は1人乗りで、運賃はこの写真の撮影時で南小松島駅から小松島港までが60円。四輪タクシーよりも30円安かった。しかし、戦後の混乱期に製作された車両のため安全性には問題があり、動力化に際しても、陸運局が「本人一代限り」との条件で改造を許可し、更生車と呼ばれたという。
四輪タクシーの普及で、徐々に姿を消していき、写真が撮影されたころには南小松島駅周辺に残っていたのはわずか4台、徳島市内でも数台しかなく、まさに風前のともしびだったようだ。