アラブ首長国連邦(UAE)の強豪サッカークラブ・アルアインで活躍する塩谷司選手(29)=徳島県小松島市出身、徳島商高ー国士舘大出=が17日、徳島市のシーサイドフットサル徳島で開かれたサッカーフェスタに参加した。昨夏にJ1サンフレッチェ広島から移籍したアルアインでは、移籍早々レギュラーに定着。リーグ戦では18試合に出場し、DFながら3得点を挙げた。塩谷選手の活躍もあって、チームはリーグ戦とカップ戦の国内2冠を獲得。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)でもグループリーグを突破し、決勝トーナメントに進んだ。UAEでのプレーや新シーズンに向けた意気込み、故郷・徳島の子どもたちへの思いを聞いた。

アルアインで活躍する塩谷司選手

 ―UAEで移籍1年目のシーズンに、国内タイトルを2つ獲得した。
 けがをして、2カ月ぐらい離脱しちゃったんですけど、それ以外はコンスタントに試合に出られました。初めての海外生活という中で、リーグとプレジデントカップという2つのタイトルを獲れたのはまずまずの成績だったんじゃないかと思います。

 ―UAEで感じた日本との違いは。
 日本ほどチームで戦うという感じではなく、個人で(打開する)っていう選手が多いのかな。観客が試合中にワーッとなるシーンって、日本だと点が入りそうなときだけじゃないですか。向こうでも同じようなときにもなるんですけど、それだけじゃなくて、すごくいいプレーがあったり、魅せられるプレーがあったときも、すごくワーッとなる。UAEの人は目立ちたがり屋のようで、派手なことが好きで、魅せられるようなプレー、相手をからかうようなプレーをしたときに、沸いたりするのが面白い。

 ―左肩を脱臼した。
 脱臼は初めて。2カ月休んでしまったが、もう大丈夫。今はプレーの不安もまったくない。

 ―言葉の問題は大丈夫だったか。
 向こうに行って(日本語の)通訳がいなくて、アラビア語は(難しいので)もう諦めて、英語が公用語でみんなできるので英語はちょっと勉強して。(今は)日常会話ぐらいなら何とかなるかなと。シーズンの最後の方になると、UAE人の選手とドバイに遊びに行けるようになったので、そういうところは言葉を学んで成長できたかな。

 ―暑さや環境の違いに戸惑いはなかったか。
 練習は夜。日本だと朝だったので、生活リズムとか最初ちょっと戸惑ったが、慣れてしまえば特に問題なかった。食べ物は何でも食べられるので全然大丈夫。ビリヤニっていう結構スパイスが効いたご飯の料理とかも食べるし、アラブ料理だけでなく、いろんな国のご飯があるので、食の面では苦労してないです。

 ―1シーズン戦って疲れは。
 (UAEには)フレッシュな気持ちで行けたので、いろんなことが初めてだし、いろんな経験をできて、あっという間に1年が終わったなという感じ。ホームシックのようにならなかったし、楽しくUAEで生活できたんで、あんまり疲れたというのはないかな。充実した1年で、楽しく終えられたなと。

 

 ―左サイドバックとして定着した。
 (試合の)最初は右でやっていて、(試合中に)左に代わったりしていて、シーズン途中からは最初から左でやるようになった感じ。1試合だけだったけど、ボランチもやったり。いろんなところで使ってくれてる感じです。

 ―左は初めての経験だ。
 そうですね。鹿島にいたカイオがチームにいて、そのカイオは日本語ができる。他の選手は日本語が分からないので(カイオとは)いいコンビネーションできているのじゃないかと思います。

 ―左サイドでのプレーはしやすかったか。
 前にいる選手によると思うんで。広島のときだったらミキッチ(現J1湘南)がいて、すごいやりやすかった。お互いが特長を生かせるような関係になれれば、すごくやりやすい感じで、今はカイオとそういう関係を築けている。すごく楽しくやれています。

 ―シーズン最終戦はACLのトーナメントだった。UAEでのACLの位置付けは。
 向こうでACLは、国内リーグよりも上。日本なら国内リーグ(Jリーグ)が一番じゃないですか。(アルアインは)国内リーグを取って当たり前。アジアチャンピオンになれるかっていうところでサポーターも盛り上がるし、観客も入る。やっぱりアジアで一番になりたいということですよね。

 ―常に国内ではタイトルが求められるアルアイン。プレッシャーはなかったか。
 結構気楽にやってました。言葉が分からず通訳もいないので、気楽な気持ちで。現地の人が一生覚えていることもないだろうしと、気楽な気持ちで。変に気負いすぎてもよくないので。

 ―来季はアジアナンバー1に向けて再挑戦になる。
 クラブワールドカップもあるし、ACLも来年2月ぐらいからまた始まるので、そこでもう1回、上を目指してやらないといけないと思います。

 ―新シーズンは12月にクラブワールドカップも控える。
 1シーズンやってみて、どういう感じで1年間が流れていくのかという感覚がつかめましたし、新しいシーズンはもっといいパフォーマンスを出せるように、さらに成長できるようにしていきたいと思います。クラブワールドカップは日本で2回出ましたけど、違うチームで出られるというのもすごく楽しみですし、すごくいい大会なので、楽しんでサッカーをしてこれたらと思います。

 ―レアル・マドリード(スペイン)と対戦するチャンスでもある。
 レアルとはやりたいですね。そういう場面だと日本でもテレビに映る可能性があると思うので、そこで頑張っている姿をみんなに見せられたらなと思います。

 ―シーズン序盤には得点も重ね、攻撃力も発揮した。さらにレベルアップしたい部分は。
 全部上げていかないといけないと、まだまだ感じている。波をなくすとか、常にいいパフォーマンスが出せるよう、コンディションのところであったり。この歳になるとなかなか急激にうまくなるというのは難しいと思うので、どれだけ安定した選手になれるかというのも一つ。あとは、右だろうと左だろうと他のポジションだろうとできるような、どこでもできるよっていう、そういう存在が貴重だと思うので、そういう選手を目指していきたいと思います。

子どもたちにサインする塩谷選手

 ―オフの期間を利用して、故郷・徳島でのサッカーフェスタに参加した。自ら申し出て開催されたようだが。
 自分の都合で(急な開催になり)あまり準備期間がない中で、こうやって開いてくれて。準備に関わってくれた人、来てくれた子どもたちに感謝したい。短い時間でしたけど、一緒にプレーしてすごく楽しかったですし、また新しいシーズンもやってやるぞという気持ちになりました。

 ―今回のワールドカップは残念だったが、4年後へは。
 サッカーを辞めるわけではないので、やっている限りはチャンスがあると思う。

 ―代表への思いは。
 そこは目指してやらないといけないと思いますし、選ばれれば徳島の子どもたちももっと僕のことを目指してサッカーしようと思ってくれるだろうし、そういう子どもたちの目標であり続けるためには、そういうところにいなければならないなと思います。

 ―徳島から応援している人や子どもたちへメッセージを。
 UAEの情報はなかなか日本に入りづらいと思うけど、応援しているよとたくさん言ってくれますし、そういう方たちのためにも、もっともっと頑張って、日本にもっと情報が届くように頑張っていきたいなと思います。徳島の子どもたちも、プロサッカー選手を目指して頑張ってほしいなというのと、Jリーガーになって、日本代表になって、という選手がこれから出てくることを心の底から願っています。

パスの指導をする塩谷選手