NHKの番組制作のために撮影を許可した本尊などの写真を書籍や商品に無断使用したとして、四国霊場2番札所・極楽寺(鳴門市)と67番・大興寺(香川県三豊市)、四国八十八ケ所霊場会(同県善通寺市)が、新潟県の男性写真家に書籍の販売差し止めなどを求めた訴訟の判決公判が20日、徳島地裁であった。川畑公美裁判長は請求を一部認め、販売差し止めや、両寺への慰謝料など計220万円の支払いを命じた。

 判決理由で川畑裁判長は「一部の写真は無断で撮影された」と指摘。「信仰の対象として重要な本尊を寺の意思に反して広く一般に流布する行為は、宗教上の人権を侵害する不法行為に当たる」と非難した。撮影した写真を使用した書籍や商品の販売などを差し止め、写真やネガフィルムを廃棄するよう求めた。

 判決によると、写真家は1999年から各霊場にある仏像の撮影を開始。2000年末から01年にかけて番組制作のためNHKから同行取材を受けた。霊場会はNHKの番組と関連書籍以外に使用しないことを条件に挙げていたが、極楽寺が秘仏とする本尊と、60年に1回しか公開しない大興寺の本尊の写真を撮影し、写真展で公開したり書籍などを販売したりした。

 原告代理人の妹尾祥弁護士は「非常に画期的な判決。秘仏の歴史的・宗教的意味を踏まえており、主張が認められた」。被告側の弁護士は「判決文を見ていないのでコメントできない」としている。