久保修さん、57歳。脳性まひで手足に障害がある。20年近く前から、自分の体験を語る講演会を続けており、その数が千回を超えた、と13日付の本紙夕刊で読んだ

 養護学校を卒業し、神戸での職業訓練を終えて帰郷したのが19歳。運よく就職も決まり、自転車通勤を始めたのはいいが、地元の中学生からしつこく嫌がらせを受けた。歩き方やしゃべり方をからかわれたりするのはまだましで、囲まれ、自転車ごと引き倒されそうになったりも

 近所にいとこがいた。髪は染めてなかったが、かなりやんちゃな女子高生。話を聞いて猛烈に腹を立てた。「修ちゃんは手足が悪いだけで何が違うん」。次の日、嫌がらせがぴたっとやんだ。いとこが中学生に電話をかけて、すごんでみせたらしい

 もう何年の付き合いになるだろう。久保さんに会うたび、そんな話がぼろぼろと出てくる。つらかったことや支えてくれた人のこと。ひどい人はいくらでもいるけれど、負けないぐらい味方がいる。今はアメリカで暮らす、いとこのような

 妻も障害者。素直に育ってくれた息子がちょっと自慢だ。愛知で車の設計をしている。「1台買ったろか」と久保さん。即座に「無理」と息子。何でや、と聞くと国産最高級車の名を口にした。「なっ、買えるか」

 障害があれば不便はある。でも、不幸ではない。