波打ち際には、小さな細長い石が無数に重なり合う。沖合に浮かぶ岩礁や周囲の岩の露頭が波で砕けて流れ着いたようだ。上を歩くと、ザクザクとした音が足元で響く。寄せる波の音が心地よい。

 隠れた名所として知られる小神子(こみこ)海岸である。小松島市街地から車でわずか10分ほどにあるとは思えない静けさが漂う。小松島市と思いがちだが、住所は徳島市大原町。地図を見れば確かに同市域にあるが、小松島市からしか道はない。徳島市の飛び地のような場所だ。

 案内標識がなく、地図をにらみながら細い道をたどる。初めて訪れると、これでたどり着けるのかと不安になるだろう。車を進めると、突然道が行き止まりになり、舗装が途切れる。その先に小神子海岸がある。多くの海岸が防波堤などで仕切られる中、昔ながらの自然が残る。

 海岸を北に向かって歩いて行く。北端の露頭に立つと、北側に広大な海岸が見える。小神子海岸と対をなすとされる大神子(おおみこ)海岸だ。いずれも難読地名として知られ、神子は海の神に仕える巫女(みこ)から来ているという説もあるが、正確な由来は定かではないようだ。