事業アイデア・プランコンテスト「とくしま創生アワード」の最終審査会が18日に徳島市で開かれる。本年度は2部門に計63件(昨年度比4件増)、新設した小中高大学生対象の「ひらめき賞」に76件の応募があった。このうち書類審査を通過した9組と学生賞1組、ひらめき賞優秀賞の3組が最終審査会に登場する。昨年度の最終審査に挑んだ10組から、着実に歩みを進めている3組の近況を紹介する。

農業・地域創生事業「アワセテ」 山本大貴さん・城ノ内中等教育1年(松茂町)

経験積み構想膨らむ

横石社長(左)からアドバイスを受ける山本さん=松茂町広島のマツシゲート

 農業を体験したい子どもと作業を手伝ってほしい農家をつなぐ仕組みを立ち上げ、報酬として独自の「通貨」を導入して地域と農業の活性化を図る構想を発表した山本大貴さん(12)=城ノ内中等教育1年。斬新なアイデアと熱のこもったスピーチで、アイデア部門グランプリに選ばれた。中学進学を経て、今も実現に向けて模索を続けている。

 この1年は、農園経営者や起業家、弁護士らさまざまな人から意見を聞いて起業のイメージを膨らませた。子どもに適した農作業や、通貨制度などについて学びを深めたほか、松茂町のマルシェに出店して袋詰めや接客など一連の作業を経験した。

 昨年10月の出店では、親戚が育てた梨やシイタケに加え、上勝町産のスダチを販売。サポーターのいろどり(上勝町)・横石知二社長から、商品陳列やお客さんへの声のかけ方のこつを教わった。山本さんは「アドバイスを受けた後は商品がよく売れるようになった。直接指導してもらってうれしい」と感激した様子。

 動きを続ける中で、事業構想は変化してきた。農業体験を通して社会勉強だけでなく受験対策にも役立つような、新しい学習の機会を提供したいと考えている。「実現にはまだ遠いけれど経験を積んで知識を深め、より良い事業プランに成長させたい」と語った。

運動姿勢改善支援アプリ開発 DataOASIS株式会社(徳島市)

実用化へデータ蓄積

投球フォームの改善に役立つシステムの開発を進める谷岡さん(左)と中村さん=徳島市の徳島大常三島キャンパス

 人工知能(AI)技術の一つ「フォーム認識アルゴリズム」を応用し、運動姿勢の改善を支援するアプリケーション開発のプランで最終審査に進んだ。現在は、四国アイランドリーグplus・徳島インディゴソックスと共同で、投手の投球フォーム改良に役立てる研究を進めている。

 開発中のシステムは、圧力センサーを使った測定装置の上に立つ投手のフォームを動画撮影すると、重心の移動速度や腰と肩の動き、肘の角度が測れる仕組み。複数の選手を撮影して、球速を上げるために重要な体の動きのデータを蓄積し、アプリケーションとしての実用化を目指す。

 実現すれば、スマートフォン一台で手軽に、投球フォームの改善練習が可能になる。最高情報責任者(CIO)の谷岡広樹さん(48)=徳島大情報センター講師=は、コロナ禍で多くのスポーツイベントなどが中止になる中、「一人で練習しても上達できるツールを作りたい」と思いを強くしている。徳島大理工学部4年の中村颯己(そうき)さん(24)が研究を手伝い、1年後の完成を目標に据える。

 「徳島なら、スポーツ選手の育成で県外から人が集まる町づくりができるのではないか。その環境整備を支えるシステムや製品を作れたらうれしい」。谷岡さんは、研究の先に、徳島の将来像を見据えている。

未来みらくる野菜プロジェクト 株式会社リレイション(徳島市)

連携の申し出相次ぐ

味や栄養価などにこだわった野菜が並ぶ「八百屋未来」=徳島市佐古六番町

 「未来の暮らしを考える」をコンセプトに、味や栄養価にこだわる生産者が育てる野菜の販売を通し、生産者と販売者、消費者がつながる「八百屋未来(みらくる)」の取り組みを披露した。昨春、徳島市の蔵本町から佐古六番町のカフェに場所を移し、毎週水曜日の営業を継続。カフェ利用者や近隣住民を中心に、コミュニティーを築いている。

 地域づくり事業などを行うリレイション(徳島市)と農産物卸などのおしこく商店(佐那河内村)の共同事業。生産者の志が価格に反映されにくいという課題と向き合い、地域を支える農業を守ろうと始まった。

 レンコンやビーツ、ネギなど、店先には毎回10~20種類の野菜が並ぶ。「しっかりと根を張って育つので甘みが強いですよ」。店主が説明する傍ら別の客同士が料理の仕方で会話を弾ませる。リレイションの齋藤千夏さん(25)は「こういった触れ合いがうれしい。皆さんが考えるきっかけになるよう、生産者のこだわりや現状を丁寧に伝えたい」。

 最終審査会以降、活動に共感した人たちからコラボレーションの申し出が相次いだ。徳島市内のカフェや居酒屋では出張販売やメニュー開発、保育園での出前教室も行った。こだわりの農業が続く未来を思って選択する消費のスタイルが、小さな八百屋からじわりと広がり始めている。