徳島新聞社は四国の3新聞社、4県との共催による「四国活性化プロジェクト」で「#四国のイイトコ」を募集しています。新型コロナウイルス下で首都圏の人々が四国をどう見ているのかについて、東京に店舗を構える4県のアンテナショップの担当者らが座談会で紹介します。

「四国活性化プロジェクト」詳細はこちら→https://www.ehime-np.co.jp/online/shikoku_no_iitoko/index.html

(右から)井寺喜香さん、佐伯賢司さん、大谷弘子さん、佐々木誠さん、三田貴弘さん=東京・新橋

井寺さん 田舎の人は自信を持って

佐伯さん 地方PRし全体盛り上げ  

   大谷さん もう少し がつがつしては

   三田さん 四国外にない「当たり前」

      佐々木さん 個人事業主の代替わり課題

 

 ―コロナでどう変わった。

井寺喜香さん

 佐々木 2020年12月は最後の5日間だけコロナで実家に帰れない人にすごく来てもらった。それ以降、若いお客さんがコンスタントに来てくれている。

 今まで来なかった若いお客さんが来るきっかけにコロナがなったのは、けがの功名。売れている商品は「リープル」という地元で知られた乳酸菌飲料や、練り物のすまき。若い人も高知にいた時を懐かしんでいるようだ。

 三田 赴任したのが20年4月。引き継ぐ前とでは世界が変わり、集客が良いことなのかという状況だった。緊急事態宣言を受け2カ月休館し、20年度は売り上げが前年度比6割減と過去最低だった。現在はコロナ前の8割ぐらいに戻っている。

佐伯賢司さん

 冬場は愛媛のかんきつが本番を迎える季節で、せとうち旬彩館ではかんきつを中心によく動いている。「増えてはきたかな」と思うが、古参は「まあまあですね」と言う。

 佐伯 1階がセレクトマーケット、2階はレストラン。夜の営業ができず、お酒を出せないのが相当なダメージだった。

 コロナが直撃したのは開業から3年目。徐々に認知され、お客さんが増えてくる時に休業せざるを得なくなり、非常に慌てた。弁当のデリバリーを始めた。セレクトマーケットということでこだわりがあり、原価もかかっているが、店の認知を高めるのが目的だ。

 井寺 住宅街にあり、生鮮品を扱うライフラインでも

大谷弘子さん

あるので、宣言中も閉めるわけにはいかなかった。

 店をリニューアルし、料理ができるように倉庫を改造し、20年10月から弁当を始めた。ユズやスダチ、ユコウの酢を使った郷土料理のおすしは珍しく、ちょっとずつ認知してもらった。徳島に行きたくなってくれた人が多い気がする。

 ―東京のお客さんに各県を紹介する上での苦労は。

 三田 松山は知っているけど愛媛は知らない人がたくさんいるが、四国を知ってくれるだけでもいいじゃないかと。「お客さんが欲しいのは香川のものですよね」と話しつつ、愛媛はかんきつ王国でミカンがおいしいです

三田貴弘さん

よ、とPRする。

 四国になじみがない人も多いが、それだけ可能性を秘めている。捉え方の問題かな。

 佐々木 お客さんはぼんやり四国を一緒くたにしており、うどんもスダチも聞かれる。一番ショックだったのは、コロナで若い人やカップルがよく来るようになって、「高知って愛媛でしょ?」と言われたこと。それは一緒くたすぎるだろと。

 何となく四国のイメージがあって、どこに何県があるかまでは理解していないが、四国を一つとしてアピールできるのが第一なのかな。かんきつなら四国に来れば何

佐々木誠さん

でもあると、大きなくくりで見た方がいい。

 三田 うちは逆。四国といったら最初にイメージするのが高知と言われることが多い。一番キャラが立っている。全国区になっている坂本龍馬のようなファクターが高知にあるのかな。

 佐伯 香川の小豆島を中心に発信をしているが、小豆島ってぴんときていない。陰に隠れがちな地方をPRする必要がある。中心だけではなくて、全体で盛り上がっていくのが大切だ。

 小豆島でも少し探すとプロよりうまい野菜を作っている人がおり、家で食べて近所に配るだけという。それをぜひ販売させてほしいというやり方をしている。時間と労力がかかるが、そういうことをやっていかないともったいない。

 井寺 古き良きもの、レアなものが、四国は遅れたから残っている。でもそれが逆に、今の時代の先を見越した人にとって光るものに見える面白い時代の渦巻きが起きていると感じる。

 一つの県では太刀打ちできないくらい四国の人口は減っている。お遍路とか外国から注目されるものも交えて、魅力を発信すればいい。東京の人は四国を見ている。「徳島の何」というより、「四国のどこ」というのが必要で、それが相乗効果で四国に広がる。

 私は小さい小売りから始めて10年になるが、例えば、魚の干物の種類が減ってきている。漁業の後継者問題が影響しているのだろう。生産者も事業者も代替わりがうまくいっていないところがある。時間がない。全て残せなくても、ちょっとでも残せたらと思う。

 佐々木 小さいところの代替わりは、高知もできていない。野菜は直売所の野菜をそのまま仕入れている。ある生産者のショウガが一番売れる。いっとき「やめる」と言っていたが、息子さんが県外から戻って継ぐというので、教えながらやっているという。

 タイミング的に70、80代で代替わりしようとしたけど、ままならなくなっている個人事業主も多い。地域おこし協力隊とかもやってくれているが、人口流出はなかなか止まらない。

 ―四国外から見た提案やアドバイスは。

 佐々木 小さいコミュニティーで経済が回っていたが、人口も減り、外に向かっていかないといけない。あまり難しく考えず、一つのきっかけとしてアンテナショップをうまく利用してもらうと、外に向かうスタンスが変わるのではないか。

 三田 自分たちの足元の魅力を普通のように思っている。例えば、あんもち。年末に飛ぶように売れるので「どこでも売っているのに」と言うと、店長に「どこで売っているのを見ましたか」と返された。外に来て初めて分かる四国の特徴がある。

 東京の人には、紅まどんなやデコポンも全部ミカン。「ミカンありますか」と聞かれて「河内晩柑(ばんかん)ならある」と答えると「要するにミカンでしょ」と言われる。当たり前が、外に出ると当たり前じゃないと分かって営業する、魅力をPRするのが必要だと勉強させてもらった。

 大谷 皆さんあまり商売気がない。すごくいいものがあるのに。送料とかも考えず、品物代だけ請求されたこともある。

 仕入れ担当が「新しいものが欲しい」とメーカーに言うと、「東京は時間がかかるので」と断られる。もう少しがつがつしてもいいのでは。こちらもコミュニケーションを取ってもっと引き出し、いいものを扱いたい。

 佐伯 自分たちの良さをちゃんと分かっていない。東京に売ったことがないという小豆島の事業者から仕入れた時に「お客さんが喜んでいる」と伝えるとすごく喜び、「もっと入れましょうか」となった。自分たちが作っているものの、自信はまだまだ。本当の魅力があると知ると、もっと積極的になってもらえる。

 井寺 アンテナショップは今まで外向けの場所だったが、こっちの話を田舎に伝える、田舎の人に自信を持ってもらうPRを県にやってもらいたい。

 数年前、子どもの友だちを連れて帰ると、みんな川の中に入って3時間も出てこなかった。田舎の人は「何が楽しいの」と言うが、行った人たちは「最高の夏になった」。でも、田舎の人に東京の人はこれが楽しかったというフィードバックが全然ない。

 (フィードバックすれば)地元の地産地消にもなる。大きい会社のものでなく、地元のおばあちゃんのお菓子を買おうかとか、外国のオレンジを買うならミカンにしようとか。そういう意識を付けてほしい。

 三田 四国は、もうかる地域にならないと、人が流入してこない。豊かさにはいろいろあるが、外から来て魅力を感じてもらうには、一定程度、普通以上の暮らしが頑張ったらできるという期待を持ってくれないといけない。自然があるのも一要素だが、そこだけでは仕事がないよねとなる。もうかる農業とか、四国に可能性がある、というのをつくるのが行政の仕事なのかなと思う。