昨年3月に徳島市の雑居ビルで起きた放火事件で、殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われている牟岐町辺川、無職岡田茂被告(39)が17日、勾留されている徳島刑務所で徳島新聞の取材に応じ、現在の心境や動機などを明かした。自殺願望から事件を引き起こしたとし、「奇跡的に誰も死ななかったが、死刑になるだけの罪はある。死刑にしてほしい」などと語った。岡田被告の裁判員裁判は18日、徳島地裁で始まる。
―間もなく初公判を迎える。今の心境は。
情報が入ってこないので時間の流れがよく分からない。短かったような長かったような。そんな気持ち。
―事件ではガソリンを使ったとされる。なぜ危険な手口を実行する気になったのか。
1週間ぐらい前から精神的に厳しくて、自殺したいと思うようになった。何か犯罪でも起こして、それから死のうと。京都の事件(京都アニメーション放火殺人事件)も参考に。
―なぜ、かつて通っていたアイドルグループのライブ会場を選んだのか。
死にたいと思った時、たまたまライブがあるのを思い出した。(アイドルに)復讐(ふくしゅう)するとか、不満があったとかではなかった。困らせようと。ライブが中止や延期になればいいと思った。精神的におかしくて、京都の被害の深刻さとか、危なさまでは考えていなかった。
―自殺したいと思うようになった理由は。
現世に悔いがない、この人生でやるべきことはもうないと(考えた)。12年間ひきこもっていたので。
―12年前に何が起きた。
高校を出て働いて、半年で辞めた。それから1年近くひきこもったのが最初だ。それからも、仕事を始めては辞めるの繰り返し。12年前も仕事を辞めた。
―ひきこもり生活の中でアイドルは心の支えだったのではないか。
好きな音楽やアイドル、プロレスは自分が社会とつながる居場所だった。
―もし、当時の自分に戻れるならどうする。
事件を起こさずに死ぬ。
―昨年12月、大阪市でビルが放火されて25人が亡くなる事件が起きた。容疑者の男の自宅から、徳島市のビル放火事件の記事が見つかったようだ。模倣犯的な可能性が指摘されている。
そのつもりはなくても、結果として、犯罪の「バトン」を京都から受け取り、つなげてしまった。自分のやったことでは奇跡的に誰も死ななかったが、自分にも死刑になるだけの罪はある。死刑にしてほしい。
―改めて徳島の事件について聞きたい。ガソリンを購入したのはセルフ式の店だったという。なぜこの店を選んだのか。
派遣社員として働いていた時に使い慣れたスタンドだった。セルフ以外だと身分証明が必要だと知っていた。勝手にガソリンを入れていたら(誰かが)止めに来てくれるかもしれないという期待のような思いがあった。セルフ以外だと、ばれたらすぐに逮捕されると思ったのかもしれない。
―事件の前後で実際に自殺しようとしたのか。犯行後は関西を訪れている。
そうだ。当日(犯行の後)に大阪へ行き、2、3泊して一時的に自宅に戻り、それから大阪にもう一度(行った)。全部で1週間ぐらい。事件の後に自殺しようとした。
―今でも死にたいと思っているのか。
(勾留中の)施設内では死なない。いろんな方と約束したから。
―家族との関係は。
母親は自分にとって大切な存在。病気で家にいない。死にたいとか苦しい気持ちを打ち明ける人がいなかった。事件を起こしてからは、父親と母親を殺人者の親にさせなくてよかったと本当に思う。