プラスチックでコーティングされた農業用肥料による環境汚染への懸念が、県内で高まっている。肥料成分が溶け出た後のプラスチックの殻が細かく砕けて田畑から川や海に流れ出し、魚介類を介して人体に入る恐れも指摘されている。効き目が長持ちすることから広く普及しているが、環境問題に取り組むNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー(上勝町)は「徳島では環境や生物への影響が認知されていない」と問題視しており、27日に町内で研修会を開く。
プラスチックでコーティングされた肥料は「樹脂被覆肥料」「一発肥料」などと呼ばれ、直径2~4ミリほどの粒が一つ一つプラスチックの殻で覆われている。肥料メーカーなどでつくる日本肥料アンモニア協会(東京)によると、市場に出回り始めたのは1970年代末。水田にまくと成分が少しずつ溶け出し、従来の肥料より効き目が長持ちするため、農家の手間の軽減につながるとして広く普及した。
一方で、プラスチックの殻が川や海に流れ出すのが懸念されるようになった。環境ベンチャー・ピリカ(東京)が2020年度に行った調査では、国内の川や港湾など120カ所のうち112カ所で直径5ミリ以下のマイクロプラスチックを確認。15%が肥料をコーティングするプラスチックで、23・4%を占めた人工芝に次いで多かった。
マイクロプラスチックは魚介類などに取り込まれ、食物連鎖を通じて人体に入るとされ、対策は世界的な課題だ。昨年、英国の大学などが発表した調査結果によると、日本では1人当たり年間最大13万個のマイクロプラスチックを摂取していると推定される。
徳島県農林水産部の担当者は「樹脂被覆肥料を規制する法律はない」とした上で、「(田植えの前に行う)代かきの際に水を浅く張るなど、肥料が流出しないよう農業団体を通じて注意喚起している」と説明する。しかし、自身も農業を営むアカデミーの笠松和市理事長は「私がこの問題を知ったのは昨年2月。使っている肥料のパッケージに記載はなく、説明を受けたこともない。多くの農家も知らないのではないか」と指摘する。
肥料メーカー側も手をこまねいているわけではない。日本肥料アンモニア協会の担当者は「業界では長年、プラスチックを薄くする技術開発を続けている」。JA全農とくしまの担当者は「パッケージに表示していこうと話し合っている。流出させないための啓発も強化する予定だ」と言う。
対策に乗り出す自治体もある。滋賀県農業技術振興センターは肥料メーカーと共同で、プラスチックを使わない代替肥料の効果を検証している。硫黄でコーティングした肥料や、少しずつ水に溶け出すウレアホルム肥料を使ってコシヒカリを育てたところ、収量や品質に変わりはなかったという。
笠松理事長は「多くの人にこの問題を知ってほしい。肥料に限らず、現代の暮らしはプラスチックであふれている。メーカーが責任を持って回収できない物は販売できない仕組みにしないと、自然界へのプラスチック流出は止まらないだろう」と話している。
研修会は午後1時半から上勝町の月ケ谷温泉。事前申し込みが必要で、定員は先着40人。申し込みはアカデミー事務局、電話090(2783)3404。