正法寺川沿いに建つ橋本夢道の句碑=藍住町奥野

帰郷時に詠んだ作品

 藍住町役場近くにある正法寺川公園(同町奥野)は、西日本一の木造アーチ橋「みどり橋」で知られます。その橋のほとりに建つのが、地元出身の自由律俳人・橋本夢道(1903~74年)が詠んだ「花茨釣れてくる鮒のまなこの美しき」の句碑です。

 橋本夢道は同町徳命の農家に生まれ、15歳で上京。有名な種田山頭火、尾崎放哉の師匠でもある俳人・荻原井泉水に師事しました。プロレタリア俳句の代表的な作家として知られ、戦時中には厳しい弾圧も受けました。有名な獄中句「うごけば、寒い」をはじめ、71歳で亡くなるまでに5千句を超える作品を残しました。

 句碑は高さ2・7メートル、幅2・2メートル、厚さ70センチの青石製。95年に夢道のおいで、洋画家の故佐野比呂志さんら県内の文化関係者15人が「橋本夢道句碑建立期成同盟会」を結成し、町内外から募った寄付金約300万円で建てました。

 「花茨—」は67年夏に帰郷した際に詠んだ句です。夢道自筆の書が残っており、川沿いが建立地に予定されていたことから、この句が選ばれました。現在、町文化ホール(仮称、2019年3月完成予定)の建設に伴い、工事用パネルに囲われており、見ることはできません。

 句碑建立の呼び掛け人の一人で、1997~98年に徳島新聞夕刊に評伝「桃咲く藁家から—橋本夢道物語」を連載した漆原伯夫さん(80)=同町富吉=は「夢道の生き方や句は魅力にあふれている。偉大な俳人が町から輩出していたことを知り、町民には誇りに思ってほしい」と話しています。