ドメスティックバイオレンス(DV)を巡り、裁判所が被害者への接近禁止などを命じる「保護命令」が盛り込まれたDV防止法が施行されて5年後の2006年、DVの実態や危険性を社会に知らしめる事件が吉野川市で起きた。保護命令を受けていた夫が別居中の妻を殺害した「吉野川市DV殺人事件」だ。

 保護命令発令中の殺人は全国で初めてとされる。 保護命令発令中の殺人は全国で初めてとされる。「DV防止法への不満がきっかけの一つとなった最悪の事件が徳島で発生し、支援者や被害者が受けた衝撃は大きかった」と、ウィメンズカウンセリング徳島の河野和代代表は振り返る。河野代表は当時、徳島地裁で全ての公判を傍聴した。「夫は典型的なDV加害者との印象だった」と言う。

 裁判記録によると、夫は仕事を持つ妻に対して自身の事業を手伝い、家事や育児も完璧にするように「命令」していた…