徳島市出身の作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんと、長崎市出身の俳優・歌手の美輪明宏さんによるトークショー「戦後70年、これからを生きるあなたへ」が25日、長崎市で開かれた。寂聴さんは「長崎と広島の犠牲を繰り返さないでほしい」などと話した。
長年の友人である2人は、出会いのエピソードや交友関係、平和への思いなど幅広いテーマで、ユーモアを交えた軽妙なトークを展開。約2千人の聴衆は熱心に耳を傾けた。
美輪さんは、明治から昭和初期にかけて多くの芸術家が活躍し、日本文化が成熟したと紹介。「瀬戸内さんの作品にはその移り香が残っている」とした上で、「戦争が始まると、美人画や英語が禁止されるなどして、文化や知性がどんどん失われた」と戦時中の世相を回顧した。
寂聴さんは「今はあの時代とだんだん似てきている。このまま行くと、『あの作家に書かせるな』『こういうふうに書け』という世の中になると思うと、本当に怖い」と応じた。
美輪さんの戦争体験のエピソードには、会場からすすり泣く声が漏れた。寂聴さんが「原爆の被害に遭った長崎から戦争に反対しよう」と訴えると、盛んに拍手が送られた。
トークショーは、長崎県美術館(長崎市)で同日始まった「瀬戸内寂聴展~これからを生きるあなたへ」(長崎新聞社など主催、8月31日まで)の関連事業の一環。