徳島を元気にする事業アイデア・プランコンテスト「とくしま創生アワード」の最終審査会が1月18日、徳島市のパークウエストンであり、アイデアとプランの両部門のグランプリと、プラン部門の準グランプリ2組が選ばれた。書類審査を通過した9組と学生賞1組が事業計画を発表。サポーターを務める徳島ゆかりの経営者や実行委、金融機関担当者、特別審査員の飯泉嘉門知事らが会場やオンラインで審査した。新設された大学生以下対象の「ひらめき賞」優秀賞の3組も独自のアイデアを披露した。事業プランと受賞者の思いを紹介する。

 主催 とくしま創生アワード実行委員会(徳島県、徳島新聞社、徳島県信用保証協会、徳島経済研究所、徳島大学、徳島文理大学、四国大学)
 協賛金融機関 阿波銀行、徳島大正銀行、JAバンク徳島

【アイデア部門】<グランプリ>

泡ベビ~一目でわかる赤ちゃんの気持ち~

i―GIP2021徳島代表・徳島大医学部5年 福本和生さん(25)

 

産後うつ解消の一助に

 福本さんは「i―GIP2021徳島」の代表を務める。i―GIPとは、認知症や発達障害といった健康にまつわる課題を若者の力で解決するため、関西の医療系学生らが主催して15年に始まったプログラム。本年度は福本さんを中心に徳島でも行われ、中高生と高専生が「産後うつ」をテーマに大学生と一緒に課題解決に向けたプランの創出と実行を目指した。

 泡ベビ構想の原点は、この活動の中から生まれた。「産声をメロディーにできないか」「泣き声から音階ができるんじゃないか」。そんなメンバーの発言から、泣き声を可視化するアイデアに至った。初めの3カ月は毎週のように、協力してくれる仲間と泡のデザインや他のアプリとの差別化などについて意見を交わした。アプリ開発が得意な友人の協力を得て、構想から約半年で形にした。

 産後うつに着目したのは、自分たちが子育てをするときにより生き生きと、健康的な家族の絆が形成される社会にしたいとの思いから。泣き声を前向きなものとして捉えて産後のストレスを軽減することは、その一歩だと考えている。子育て中の母親でつくる団体などと協力して会社設立を目指している。

 事業内容 乳幼児の泣き声に連動して出現する「泡」の色や形で、声を可視化するスマートフォンのアプリケーションを開発し、産後うつといった子育ての課題解決につなげる。泡が示す「泣いている理由」を、あやす時の参考にすることで、言葉を話せない乳幼児と親や周囲の人々との意思疎通を円滑にしていく。

<学生賞>

OSATO~もう一歩先へ~

徳島大段野ゼミ・同大総合科学部3年 高木有紗さん(21)

 

学生の声伝え商品開発支援

 学生の意見を活用して県内の中小企業の商品開発を支援するサービスを提供する。まずは、飲食店や食品メーカーにスポットを当てて事業を開始する。「学生100人によるアンケート」「試食会と価格設定などの経営分析」「消費者目線での商品評価」という三つのステップで学生の視点を企業に伝え、新商品に生かしてもらう。企業へのアフターサービスとして、アンケートに参加した大勢の学生に向けた広報宣伝も行う。

 1月に「株式会社OSATO」を立ち上げてスタートを切った。「徳島の中小企業のさらなる発展を後押しする」が会社のミッション。アルバイト収入や売り上げの減少など、コロナ禍の影響を受けた学生と飲食店がタッグを組み、苦境を乗り越えたいと考えている。代表の高木さんは「先を見据えて新たな一歩を踏み出す企業を、みんなでサポートしたい」。

 当面は特別価格でサービスを提供して、実践事例の積み上げを図る。県中小企業家同友会などの協力を得て、営業にも力を入れる。経営の専門知識を学ぶ学生の新たな実践の場としても存在感を示していく。

【最終審査進出者】

阿南の竹で創る、エシカル・バンブープラスチック

英日翻訳家・ルビン恵里さん(34)

プラごみ解決に貢献

 地元の阿南市をはじめ県内各地で豊富にある竹林を原料にしたバイオプラスチックの商品化に取り組む。具体的には食器や持ち帰り専用の容器、収納ケース、小売店で使われる食品包装などを想定。徳島の伝統産業の藍染を取り入れ、デザインと機能性の面で独自性を打ち出す。見栄えが良く、環境に配慮した商品の販売を通し、放置竹林やプラスチックごみの海洋流出といった課題解決に貢献するとともに、新たな産業創出による地域経済の振興を志す。

バナナスイーツで新野の魅力発信 キラキラ・わくわくプロジェクト
緑のリサイクルソーシャルエコプロジェクトチーム

阿南光高3年 青木優衣さん(18)上山美月さん(18)

駅を中心に活力生む

 阿南光高校新野キャンパスで栽培しているバナナに着目し、新たな地域の特産品となるスイーツを作る。商品開発に当たっては、地元のパン屋などと連携。「おいしいスイーツ」を核に、JR新野駅をギャラリーカフェにしたり、観光列車を運行したりといった活性化策をJR四国に提案し、駅を中心に「スイーツの町」としての魅力を創出して利用客を増やし、地域に活力を取り戻す。

 

【プラン部門】<グランプリ>

質量分析技術による個別化医療

ロジカルプロセス株式会社(石井町)代表取締役・栃澤欣之さん(32)

 

統計学生かし検査充実

 「統計学によって医療を最適化したい」。栃澤さんは最終審査会のプレゼンテーションで力強く語った。従来の検査は、病院などで採血し、複数のキットを使って項目ごとに個別に調べられる。これでは効率が悪く、検査項目が増えると医療費が上がるという問題があった。この課題解決を将来の目標に掲げて2021年10月、ロジカルプロセス社を立ち上げた。

 大学卒業後、大塚製薬(東京)の徳島研究所で質量分析や統計に携わってきた。その後退社し、研究者の視点から、統計学と質量分析技術を掛け合わせた今回の事業に行き着いた。従来の作業工程をロボットで自動化し、データ解析には高度なAIと、統計学に基づいた再現性の高い解析法を用いる。これによって、キットを必要以上に増やさずに検査項目を300以上に増やせる上、精度を向上させて費用も安価に抑えられるという。

 うつ病や各種疾患の新しい指標(バイオマーカー)を開発して人々の健康に寄与したいと考える。技術の科学的検証、学会での発表、規制当局への申請と道のりは長く見える。栃澤さんは「研究成果が出れば実現は決して難しくない」。徳島大と共同研究などで協力しながら歩みを進めていく。

 事業内容 高感度の測定が可能な質量分析の技術を、本格的に医療へ活用できるよう研究開発を進める。質量分析では、多種類の液体の検体に含まれる成分を網羅的に測定できる。従来は項目ごとに行われる検査を一度にできれば、患者の負担軽減になる。また、優秀な技術者ら地元人材が活躍できるよう、徳島を拠点に事業拡大をもくろむ。

<準グランプリ>

徳島にも『生きる力』を育む演劇教育のカリキュラムを

鳴門市地域おこし協力隊・高橋真冬さん(27)

 

成長・ニーズに応じ展開

 県内小学校のカリキュラムに「演劇教育」の導入を目指す。演劇教育は、作品ができるまでの過程を経験することで、表現力や想像力などが身につく効果が期待できる。生きるために必要なコミュニケーション能力の向上を狙い、児童だけでなく企業の新人研修や、幼児向けのワークショップなど、成長やニーズに応じたメニューを展開する。大阪芸術大卒業後、舞台俳優として経験を積みながら脚本や振り付けなどへ幅を広げてきた。現在は大阪芸大と連携し、鳴門市教委とモデル校の設置に向けて協議している。ミュージカルスクールを運営しながら、今春には新会社「モリーズエンターテインメント」を設立予定。事業プラン実現に向けて歩みを進める。最終審査会当日は高橋さんの誕生日で、受賞の感想を尋ねられ、「今日を新たな出発の日として、これからも精進したい」と笑みを浮かべた。

竹パウダー米「竹姫」~商標登録済~

NPO法人太鼓の楽校(吉野川市)理事長・吉野美保さん(58)
NPO法人竹林再生会議(阿南市)理事・事務局長・加藤眞由美さん(68)

加藤眞由美さん(左)と吉野美保さん

竹を肥料、温暖化防止も

 竹林を整備したときに出た伐採竹をパウダー状に加工し、米作りに有効な肥料として活用する。農薬などを使用せず、竹パウダーのみで育てられた安心安全でおいしい米を「竹姫」というブランドで販売。一般向けのセミナーや高校生への環境指導を通して、この農法を各地に拡大。竹の有効活用と、化学肥料を使わないことによる二酸化炭素の排出削減と地球温暖化防止、米作りの次世代継承につなげていく。

 吉野さんは「放置竹林は全国的な問題で、竹が生える地域は世界中にある。農業への竹パウダー活用が進めば、各地がより豊かになるのではないか。受賞をきっかけに、さらに活動を広げていきたい」と話した。

【最終審査進出者】

徳島の規格外農産物でこども食堂支援

ふるさとバスケット(阿南市)岡本哲子さん(33)

魅力伝えファン作り

 徳島で採れた規格外の野菜や果物を、大阪府内の「こども食堂」の活動支援に生かす。野菜は県内の産直市や農家から無償で提供してもらい、高速バス会社の協力を得て貨客混載便で大阪へ定期的に搬送する仕組み。新鮮でおいしい徳島の農産物で子どもの笑顔を支えるとともに、会員制交流サイト(SNS)による発信などを通して農産物や生産者の魅力を伝え、ファン作りを進める。農福連携による雇用拡大、オンライン販売や産直市の開催による収益化と事業の持続発展も視野に入れている。

運転能力体験ツール(PREDR=プレア)と
在宅見守り通信システム(スマイルリンク)の開発と販売

合同会社ラシエイド(徳島市)代表・岩佐英志さん(56)

車運転再開を手助け

 自社製品の運転能力体験ツールの販売などを通し、病気の後遺症で運動まひや高次機能障害になった人が自動車運転を再開できるように支援する。専用器具は、実際に運転している感覚に近いハンドルやフットペダルの操作が特徴。どんな能力が不足しているかを把握し、運転再開に向けたリハビリに生かす。農業者が安心して運転再開できるよう、トラクターに血圧や呼吸を測るセンサーを取り付けて運転を見守るサービスなども提供していく。

廃校でキッザニアカフェ大作戦~古民家宿での実験~

藤本雪絵さん(32)那賀町地域おこし協力隊

地域交流の場を目指す

 自身の母校である旧平野小学校の校舎活用を見据え、古民家でのゲストハウス運営や飲食サービスの提供、ワークショップ実施などを行う。食事は地元食材を使った健康的なメニューをそろえ、催しなどで地域住民と利用者の交流を促す。こうして需要を開拓し、将来的には校舎をカフェやコ・ワーキングスペース、生涯学習の場として利用。退職後の余暇、農繁期のアルバイト、家財整理で出た不要品といった時間、仕事、物、学びを共有し、誰もが社会に必要とされていると実感できる交流空間を作る。

 

「人を育てる」気概を再認識
ときわ代表取締役社長・髙畑富士子さん講評

 

 サポーターを代表して、ときわ(徳島市)代表取締役社長の髙畑富士子さんが講評を述べた。

 皆さんの発表を聞き、わくわくした。アイデア部門グランプリは、音を視覚化するという特殊な切り口で子育てを支援する心強いアプリで、将来が楽しみ。癒やし効果など他の五感に響く機能を追加してはどうだろう。

 プラン部門グランプリは、医療体制の課題に迫っていて世界に通用する可能性がある。他の競合に負けないようスピード感をもって形にしてほしい。準グランプリの2組も、竹パウダーは徳島だけでなく日本中の農家に広げられる点に可能性を感じた。演劇教育プログラムはコミュニケーション力が求められる現代において、演劇が持つ力を社会に還元するという観点が面白い。

 学生賞とひらめき賞の皆さんは、売り上げや社会情勢にとらわれず、現状を理解して未来をイメージしていく力に優れていると感心した。主体的にビジネスや社会環境を変えていこうというエネルギーやプレゼン力が素晴らしい。

 審査会を通して、徳島は「人を育てる」「ベンチャーをつくる」という気概がある県だと再認識した。改めて、経営者である私たちも一緒に取り組んでいかなければと思っている。

 

若い世代、独創性光る ひらめき賞に応募76件

 大学生以下を対象に初めて募集した「ひらめき賞」には76件の応募があった。優秀賞受賞者によるプレゼンテーションは、高校生2組と大学生1組が独創性の高いアイデアを発表した。

 小松島西高校食物科の生徒でつくる「チーム松西食物『キエーロ』」は、黒土の中のバクテリアが生ごみを分解する処理容器「キエーロ」の普及を呼び掛けた。同校は2021年6月から給食の残飯を処理する実験を行い、できた堆肥をハーブ栽培などに活用している。この経験から、広場にキエーロを設置して各家庭のごみを持ち込んで堆肥化し、市民の交流と環境対策、そして農作物の生産・販売につなげる仕組みを提案した。

 徳島市の商店街を拠点に学生たちが活動する「ポッポ街プロジェクト」のむすびcafeマップチームは、県商店街振興組合連合会と連携して作ったオリジナルの商店街マップを披露した。学生が取材からデザインまで携わり、各店の魅力を若者目線でまとめた一冊は、2千部が品切れするほどの人気ぶり。第2弾を制作中で、より多くの人に訪れてもらえるようウェブ公開や動画を取り入れるなど趣向を凝らすという。

池田高校観光班の皆さん

 池田高校観光班は、三好市の観光資源を生かした新たな修学旅行プランを説明。旅行生の日々の学びが深まるよう、「知る」「溶け込む」など、日ごとに設けたテーマに沿って、パラグライダーや住民との農作業、ラフティング、オリジナルのお土産作りといった活動的で地域に密着した体験を提供する計画だ。今後は地元の旅行会社と共同でモニターツアーを行うなどして完成を目指す。

 特別サポーターで合同会社ハビリテ代表の太田恵理子さんが3組に賞状を授与。「たくさんの応募があり、若い人の興味の高まりを感じた。(応募したように)一歩踏み出せば、新しい世界に飛び込む機会につながるかもしれない。これからも挑戦していきましょう」とエールを送った。

 

ブランドタケノコ好評 未利用魚の活用目指す
昨年度最終審査進出4組が現状報告

 昨年度の最終審査進出者による現状報告も行われ、4組が1年間を振り返った。

これまでの活動を報告する昨年度の最終審査進出者

 アイデア部門グランプリの山本大貴さん=城ノ内中等教育1年=は、農業を体験したい子どもと、手伝ってほしい農家をつなぐ仕組み作りによる地域活性化の構想実現に向けて、専門家に相談したりマルシェ出店を経験したりした。農作物の魅力を全国に伝える情報発信も検討しており「これからもチャレンジを続ける」と話した。

 県内有数のタケノコ産地・阿南市にある竹林を整備し、独自ブランドのタケノコ「筍姫」の生産・販売などを行う計画で、プランI部門グランプリを受賞した「阿波たけのこ農園」の庄野洋平さんは、産地直送の新鮮さが県内外で好評と言い、「春の喜びと旬の味を多くの人に届けたい」。

 釣り関連業者と釣り人らが連携して活性化を目指すネットワークを築き、「釣りのメッカ・徳島」の魅力を多方面でPRするアイデアの「とくしま釣りの輪」の阿部司さんは、未利用魚の活用に向けた水産会社との企画や、リサイクル可能な水辺のごみを資源化する仕組み作りといった構想を発表した。

 学生賞の「緑のリサイクルソーシャルエコプロジェクトチーム」は長田莉奈さん=四国大3年=と今田珠希さん=同2年=が登壇し、絶滅が危惧される海浜植物・ナミキソウの保護を通じた美波町の地域活性化策の現状を報告した。コロナ禍の影響で活動が制限される中、地元小学生との交流を計画中で「全国に誇れる自然を次世代につなげたい」と力を込めた。