県内25議会の女性議員の割合は平均10.2%。どうしたら女性議員は増えるのか。委員会をオンラインで開催できるよう条例改正するなど議会改革を進める勝浦町議会の美馬友子議長、衆院議員や県議も務めた高井美穂・三好市長に聞いた。
美馬友子・勝浦町議会議長 議会をより身近に
ー 勝浦町議会はいろんなことに取り組んでいますね。
2021年3月にオンライン委員会の開催を可能にする条例を制定しました。その後、議員が新型コロナウイルスに感染し、議会運営委員会をZoomで開いたこともあります。議会で18年から導入しているタブレットが今、非常に役立っています。子育てや介護をしながら議員活動をする人にとっても、オンラインで委員会や会議ができるメリットは大きい。子どもってすぐに熱が出ますしね。研修会などもオンラインで開くようになり、みんなオンライン会議に慣れてきています。
ー 昨年10月に女性議会を開催しています。
勝浦町議会では初めての開催です。自薦他薦で6人が参加。1人が議長役、5人が議員役になりました。議員役の女性に対しては、議員5人が担当課へのヒアリングからフォローアップして質問をつくり、議会では町長にも答弁をしてもらいました。
那賀町議会で議長をしている連記かよ子さんからも、女性議会を開催しようと考えていると連絡がありました。鳴門市では大石美智子さんが議長をしていた19年に開催しています。女性議員のつながりもあり、取り組みが広がっています。
ー 議員になりそうな人はいましたか?
声を掛けたらもしかしたら、という人はいるかもしれません。しかし、まずは議会のことを知ってもらいたいと思って開きました。町議会は生活に関わることを決めているということを知ってほしかった。皆さん地域でいろんな活動をしている方ですが、議会はやっぱり遠い存在だと思われている。男性の仕事だという思い込みもあるように感じます。
ー 他に何が出馬のハードルになっていると考えますか?
仕事など既に自分が取り組んでいる活動があることでしょうか。また、当選しようと思ったら仲間や支持者が必要。自分の決意だけでは当選できません。勝浦町には16地区あって、議員の半分ぐらいは地区の推薦を受けています。同じ地区から出ている議員が既にいれば出にくいという地域の事情もあります。
私が初めて立候補したときは、辞める人の地盤も継いだし、仲間もいた。綱引きをしていたチームなんですけど、その仲間が応援してくれました。
ただ、現職の男性議員の中にも「辞めるときに地盤を譲るなら女性だ」と言う人も出てきています。町の地区の役職に女性を入れることから始めてもいいと思います。
ー 「政治分野における男女共同参画推進法」の改正で、セクハラなどの対応も議会で求められるようになりました。勝浦町議会では現時点で定期的な研修や相談窓口の設置はないとのことでしたが、必要性は感じていますか?
私自身は経験はありませんが、他の議会の女性議員からはセクハラやパワハラはあると聞きます。他の議員から触られたり、飲み会の席でお酌を強要されたり。それから「女のくせに」という言葉はセクハラの筆頭ですよね。
研修や相談窓口は執行部と一本化して実施や設置をしてもいいかと思います。体制は必要ではありますが、大切なのは相談できる人間関係だったりもします。女性議員のネットワークではハラスメントに限らず、いろんな悩みが相談でき、分かってもらえます。「1人ではない」と思えます。
ー 議員のやりがいとは?
例えば、乳がん検診を無料で受けられる年齢を引き下げてほしい、と私はずっと要望しています。しかし、財政負担が壁になってなかなか実現しません。それでも、ずっと言い続けていると、女性の味方になってくれる人が執行部にも議会にも増えてきました。
町人口はどんどん減っていますが、教育と福祉の予算を削るのは悲しい。そこはどうにかできないかという思いで活動しています。
みま・ともこ 1958年小松島市生まれ。富岡東高校専攻科(衛生看護科)を卒業後、阿南市内の総合病院などに勤務。2011年に勝浦町議選で初当選し、現在3期目。19年7月から同議会議長。
高井美穂・三好市長 一度関わると分かる 政治の面白さ
ー 衆院議員時代(2005年)、第二子出産のため産休を取られましたね。01年に衆院で産休制度が導入され、出産前に利用する初めてのケースでした。
昔は出産で休むときも、病気やけがと同じ扱いだったんですね。「産休制度」と言われているのは(議会会議規則を改正して)「出産」を「病気とは違いますよ」というくくりで届け出を出す制度をつくったということです。民主党議員(当時)の水島広子さんが出産する際に、「出産」で欠席届けができないということで、後に続く人のために制度をつくってくれました。
私はハイリスク妊娠で切迫早産になりそうだったので、産前に入院せざるを得ませんでした。
ー 体調を考えると休むのは当然ですよね。当時、休む決断はきっぱりできたのでしょうか。
悩みましたが、仕方ない。1人目を出産したのは落選中でした。今はピンピンしていますが、早産で小さく産まれてきました。お産は同じことになりがちで、2人目の妊娠時にも医師には「ハイリスクですよ」と言われていました。
ただ、当時は郵政民営化の議論が沸騰していた。いつ法案を採決するのか分からない中で、帝王切開の日程を決めないといけなかった。日程を決めると、それが結局、採決の1週間前になりました。(賛成・反対が)何票差になるのか分からない中、行かなくていいのかとすごく悩みました。しかし、徳島から飛行機に乗って国会に行かなければ投票できない。帝王切開なので痛い。「すみません、やっぱり行けません」と。
水島広子さんに相談すると、「体はあなたしか守れない。国会のことはみんなで助け合えるから、休みな」と言ってくれた。申し訳なかったけれど、党にも「子どもを生むのは大事な仕事だから」と言ってもらいました。1票差なら私の責任になる。結局、衆院では5票差で可決。私が行っていても結果は変わらなかった。その後、参院で否決されて衆院解散になりました。
「お産は前から分かってるのに」など、厳しいことは言われました。採決の日は事前には分かっていなかったんですが。しかし、そういう「なまもの」が政治。解散後の総選挙では落選しました(その後、比例で当選した議員の辞職で繰り上げ当選)。
いろんなことを言われます。女性の方が言われやすいというのもあると思います。人前にさらされることへの耐性が必要。知らない人から、髪型や服装のことについて言われる。「なんで?」っていう感じなんですけど、一方で、(選挙がある)政治家は「注目されてなんぼ」のところもあります。
ー 高井さんが政治の世界に入ったときと比べて、女性議員や候補者をめぐる状況は変わってきていると思いますか?
そう思います。女性は自然にどんどん増えてくると思います。私は最初(2000年)、民主党の「女性」の公募に合格して立候補しました。当時の民主党には、新しい感覚の人が政治の世界に入らないと政治だけが遅れてしまう、という認識があったんですね。政治家の家系でも何でもありませんが、大学時代にNHKでアルバイトをしていたときの縁がきっかけで声が掛かって申し込みました。
地域の課題は女性がいないと解決できないですよね。人口減少で人がいないということも背景にある。「できる人にやってもらう。それがたまたま女性だった」ということが増えてくると思います。
ー(一定の議席や候補者を女性に割り当てる)クオータ制の導入についてはどう思いますか?この制度を入れないと女性議員は増えないと言う識者もいます。
私はそうは思いません。政治がこれ以上魅力的な仕事にならない場合は、増えないかもしれませんが。周囲が「政治家になってほしい」と思う人はだいたい既に忙しいから。あとは「あなたじゃないとできないよ」と背中を押して、応援する人たちの存在も大事です。
政治は、一度関わると面白さが分かります。仕事の場合も、9割が大変でも1割が面白ければ続けられますよね。この1割の面白さが重たいんです。税金をどう集めて、どう分配するか。政治の仕事はなくならず、これからもっと大切になってくると思います。
たかい・みほ 1971年、三野町(現・三好市)生まれ。早稲田大卒。ダイエー勤務後、00年の衆院選に旧徳島2区から初出馬し、03年に比例復活で初当選した。衆院議員を3期務め、文部科学大臣政務官、文部科学副大臣などを歴任した。15年4月の県議選・三好第1選挙区で初当選。総務委員長などを務め、2期目途中に市長選出馬のため辞職した。21年7月、三好市長選で初当選。06年の市発足以降、初の女性市長。