5~11歳を対象にした新型コロナウイルスのワクチン接種が7日、徳島県内で始まった。対象者は約4万人。子どもの感染が増え、ワクチン接種を検討している保護者も多いだろう。特に重症化リスクの高い疾患などがある子どもに対しては、1日も早い接種を望む声が聞かれる。
「早めの接種を検討して」と言っていたにもかかわらず、優先接種がないのはなぜ-。徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」に、基礎疾患のある小学生の子どもを持つ30代の男性から疑問の声が届いた。
男性は小児接種の予約開始を待ち望んでいた。「基礎疾患がある子どもは重症化しやすいと聞いていたので、ワクチンを打って軽症で済むのなら打っておきたかった。ワクチンは頼みの綱だ」と話す。県内の感染状況やコロナ対策が気になり、日頃から県のコロナ会見を動画でチェックして情報を集めている。会見では基礎疾患がある子どものワクチン接種について『前向きに検討してほしい』と知事が触れる場面もあった。それだけに優先接種があるのではと期待していた。
2月下旬、接種券が届いた。優先接種に関する記載がなかったため、住んでいる自治体に問い合わせたところ「優先接種はない」と言われた。「配慮してもらえないか」と頼んだが、「県が担当している。こちらは関与していないので分からない」との一点張りだった。小児接種は、居住自治体以外の医療機関でもワクチンが打てる「広域接種」を採用。県が主体となるため、各自治体では個別対応ができない。
県に尋ねると、「専門の医療機関に通院している子どもはそこで接種を受けられるように調整している。時期については(接種が始まる)3月7日前後に打てるかどうかは分からない」と説明された。
その後、県から優先接種に関する発表はないまま、予約開始日を迎えた。当日、スマートフォン2台を使って何とか予約できたものの、住んでいる自治体では受け付けている病院が少なく、隣の市にある病院で接種することになった。
基礎疾患のある子どもへの優先接種は、千葉市や新潟県長岡市など各地で実施されている。四国では香川県宇多津町が予約を優先的に受け付けており、愛媛県今治市は専用の申し込みフォームからオンラインで申請できる。愛媛県四国中央市は、接種券が届く前から予約を受け付けている。
日本小児科学会はワクチン接種に当たって考慮すべき子どもの基礎疾患などをホームページに明記しており、男性の子どもの疾患も含まれる。「ネットで検索すると、他県には優先接種を設けている所があった。徳島県の会見でも基礎疾患のある子どもは検討するよう呼び掛けていたのに、なぜ優先接種枠がないのか。早く打ちたくても予約できる手だてがないのはどういうことなのか」と憤る。
県内ではオミクロン株が流行し、学校や児童等利用施設がたびたび休校・休業になっている。男性は子どもの通う小学校が休校になったこともあり、「命に関わることなので、どうしても早く打たせたかった」。同じように基礎疾患のある子を持つ保護者からは「早く予約したかったが、枠がいっぱいで3月中の予約は諦めた」と聞いたという。
県は接種開始翌日の8日、基礎疾患などがあって専門の医療機関にかかっている5~11歳の子どもの接種特別枠を設けると発表した。県内の10病院に対象児童の有無を確認し、徳島大病院、県立中央病院、徳島赤十字病院、阿南医療センター4カ所での実施を決めた。徳島大は14日から(50人分)、県立中央では24日から(20人分)で、他の2病院は調整中だ。
一般の接種開始後の対応になったことについて、県は「接種時期を早めることだけが優先接種ではない。今後は特別枠で対応し、状況に応じて接種できる病院を増やすことも検討する」とした。男性は「3月7日から打てるように調整すべきだったのではないか。普段行き慣れていない病院で打つのにも不安がある。3、4回目の接種もあるなら、予約を先に受け付けるなりして対応してほしい」と訴える。
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