大坂峠を貫くJR高徳線・大坂山トンネルを抜ける特急列車。エンジン音が響き渡る=板野町大坂
 

 「長いトンネルを抜けると、徳島県」。JR高徳線の下り列車に乗り、香川と徳島の県境付近にある大坂山トンネル(全長989メートル)を通るたび、そう思っていた。ところが改めて調べてみると、トンネルは徳島県内にあり、板野町と鳴門市の境にある。

 

 県境のイメージが強いのは、古くからの歴史があるためだろう。トンネルが貫く大坂峠は、標高270㍍。江戸時代から阿波と讃岐の境に位置する交通の要衝として栄え、明治初年にかけての230年間は、徳島県側に大坂口番所が置かれた。

 今でも列車の窓に阿讃山脈が迫り、列車がひときわ大きなエンジン音をとどろかせながら峠越えを始めると、県境の雰囲気は十分だ。

 トンネルができ、徳島と高松を結ぶ高徳線が開通したのは1935年。意外と遅いと感じるかもしれないが、ルートの決定や吉野川架橋に手間取ったためとされる。徒歩で越えるしかできなかった県境が一気に行き来できるようになり、利便性は格段に向上した。

 2002年には、高松自動車道がJR高徳線に並行するように開通した。高松道の大坂トンネルは全長2054メートル。こちらはほぼ中央付近に県境がある。