ヴォニータ(ヴォルティス女性サポーター)には、県外から観戦に通う人もいます。兵庫県在住のひめさん(仮名)もその1人で、鳴門ポカリスエットスタジアムや練習場である徳島スポーツビレッジ(板野町)に足を運んで声援を送っています。なぜ遠い徳島のサポーターになり、通い続けるのか、話を聞きました。

選手に声援を送る徳島ヴォルティスサポーター=6月30日、鳴門ポカリスエットスタジアム

 ホームゲームでは何度か話したことがあったひめさんと、練習場で会ったのは大分戦を2日後に控えた6月28日。声を掛けると「地震で気分が滅入るし、ヴォルティスに元気をもらおうかなって」と話してくれました。

 ひめさんの自宅がある地域は、大阪府北部で震度6弱を観測した18日朝の地震で、震度5弱の揺れでした。ライフラインは止まらなかった、何とかけがをせずに済んだとはいうものの、家の中はものが散乱。余震もあり、不安な日が続きました。

 大分戦(6月30日)の会場にもひめさんの姿が。キックオフ前、改めて話を聞くと「サッカーを見に来ることができるという日常の幸せを感じます」。

 ヴォルティスのサポーターになって4年目。大阪出身でそれまで徳島とは縁もゆかりもなかったそう。「佐藤晃大選手がガンバ大阪から(2015シーズンに)移籍するのに合わせて、応援する私も完全移籍しました。ガンバ時代はファンという感じで遠巻きに見ていたので、サポーターと胸を張って言えるのは、徳島に来てからです。佐藤選手のおかげで、徳島もヴォルティスもサッカーも一層好きになりました」

 世界一好きなプレーヤーが佐藤選手。ここぞというときの集中力や粘り強さを魅力に挙げます。けがをしても止血のためのスイムキャップをかぶってプレーをする、闘志あふれる姿に心配することも多いですが、勇気づけられています。ヴォルティスでは選手とサポーターの距離が近く、ファンサービスも丁寧に応対してもらえる。先日の練習場でも「私が来ないと心配するかなと思って」と冗談を言うと、地震の被害について尋ねられたそう。選手が一人一人のサポーターの顔を覚えて、親しく言葉を交わすことができるのは、徳島ならではなのかもしれません。

 「何よりヴォルティスは女性サポーターが優しく迎え入れてくれて、仲良くしてくれたから遠くても楽しくて通い続けられます。お友達の存在がなければここまで夢中になってないし、ゲーフラを作ろうと思ってないかも」。ガンバ時代は、サポーターと友達になる機会がなかったそう。練習場ではサポーター仲間にも地震の影響を心配されたり励まされたり。大分戦のゴール裏では仲間と和気あいあいとゲーフラを掲げて応援していました。

ひめさんのゲーフラ

 ナイトゲームを最後まで観戦すると、最終の高速バスに間に合いません。そのため、ぎりぎりまで試合の行方を見守って、「(勝利後の儀式の)タオル回しまで参加できないのが残念ですけど、勝ったと信じてバスに向かいます」。

 そこまでしてスタジアムに通う理由は?「不調のときこそのサポーターだと思う。チームが苦しいときこそ熱心に応援したいし、私自身も元気をもらう。家族の介護や地震でつらいとき、どれだけ力をもらったか」

 2018シーズンも前半が終了。苦しい試合が多かったですが、前半戦最後は首位大分に3-0で勝利し、いい雰囲気で後半戦へ向かいます。「後半戦は頑張って巻き返してほしい。サポーターにできることって、試合を見に来て応援するだけです。楽しんで応援するので、選手たちにも楽しんでほしい。苦しいときこそサッカーを楽しんで」。