阿南市熊谷町の農業湯浅政夫さん(64)が、徳島県内では珍しいマンゴー栽培に奮闘している。10年ほど前から最適な温度管理や病害対策など試行錯誤し、今では品質、収量ともに安定してきた。今年は最多の3トンを見込む。真っ赤に色付いた「完熟マンゴー」は、関西市場で評価を高めている。
同市羽ノ浦町にあるビニールハウス(10アール)で、本場の宮崎県と同じアーウィン種100本を栽培。果実はひもでつるして日当たりをよくし、かぶせたネットの中で完熟させている。
収穫は5月中旬から7月上旬までで、自然に落下したものだけを出荷。糖度は15度以上あり、味は濃厚でみずみずしい。
湯浅さんは長年、スダチやユズをハウス栽培してきた。2007年ごろに宮崎県の高級マンゴーがブームになると「高値で売れるフルーツを、県南の温暖な気候で育てよう」と一念発起。苗木を購入し、08年に手探りで栽培を始めた。
当時、県内に栽培農家はほとんどなく、インターネットなどで国内産地の情報を得た。県農業改良普及所の普及員だった兄の茂さん(70)にも相談。データを取りながら加温や摘果の仕方をいろいろと試した。
そうした中、花芽が出そろうまで加温を遅らせる栽培法が功を奏し、収量は増加。湿度管理を徹底して菌の増殖を防ぐと、外観や形状の良い400グラム以上の大玉が増えた。収穫を始めた10年当時1トン未満だった収量が、14年ごろから2トンを超えたという。
大阪市中央卸売市場本場に出荷を続け、デパートや専門店にも並ぶようになった。本場内の卸売業者・大阪中央青果は「中身もしっかりしており、品質は向上している」と評価する。湯浅さんは「自己流なので時間はかかったけれど、数年前から黒字になっている。徳島で育ったマンゴーを多くの人に届けたい」と話している。