神山町議選を巡る金銭授受疑惑で、徳島県警が強制捜査に乗り出し、公選法違反(買収)の疑いで町議4人と元町議1人を逮捕した。町議1人を任意で捜査している。

 疑惑が浮上して半年余り。町議会は問題を棚上げしたまま、自浄能力を発揮してこなかった。その姿勢に不信感を募らせていた町民は多かったはずだ。県警は真相究明に全力を挙げてもらいたい。

 事件の舞台となった2015年12月の町議選では、現職7人を含む10人が無投票で当選した。選挙前は定数を1人上回る11人が立候補の構えを見せていた。

 そうした中で現職だった町議ら5人は共謀し、元町議に立候補を取りやめた報酬として、現金50万円を渡した疑いが持たれている。

 容疑が事実とすれば、金銭による無投票工作によって、有権者の貴重な投票の機会が奪われたことになる。選挙制度や民主主義の根幹を揺るがす行為である。

 疑惑は昨年12月、徳島新聞の取材で明らかになった。現金を受け取った元町議は「選挙不出馬の見返りだった」と証言し、現金は数日後に返却したと説明していた。

 一つの封筒の中に、町議5人の名前が書かれた10万円入りの封筒が五つ入っていたと、具体的に話している。

 一方、現金を渡した側の町議らは当初、現金の授受自体を否定していた。追及を受けて現金授受を認めてからも「長年町政に携わってきたことへのねぎらい」「慰労名目だった」として、無投票工作を否定してきた。

 捜査の焦点は、現金授受の経緯や主導した人物の特定になりそうだ。議員のなり手不足が深刻化しているにもかかわらず、こうした行為に及んだ動機の解明も欠かせない。

 疑惑発覚後、町議会全員協議会で「選挙で金が動くのは当然」と話した町議もいたという。現金を渡した側の町議が受け取った元町議に対し、携帯電話を買い換えさせるなど、証拠隠滅と取られかねない行為も発覚した。

 検討していた議員の報酬カットなどは見送られ、疑惑を持たれている町議の中から議長と副議長が選ばれた。

 反省の態度を示すどころか、開き直っていたと言われても仕方あるまい。

 神山町はサテライトオフィス(SO)の集積地、自然豊かな移住地として全国から脚光を浴びている。今回の事件とはあまりにもギャップが大きく、町のイメージダウンは避けられない。

 正副議長がともに逮捕されており、町政や議会の混乱は必至だ。議会に一定の欠員が出た場合(神山町の場合は2人以上)に補欠選挙が行われるため、逮捕された町議らの進退も注目される。

 町議会は今度こそ、真摯な姿勢で事件と向き合わなければならない。町議一人一人が、町民のためにどう行動するべきかを真剣に考えてもらいたい。