徳島新聞社は19日、第58回徳島新聞賞の最終選考会を開き、海外で医療・保健支援活動に取り組む吉野川市のNPO法人「TICO」を大賞に選んだ。長年にわたる発展途上国での活動のほか、最近ではウクライナの隣国ハンガリーに入り、ロシアの侵攻から逃れた人々の支援に当たったことなどが評価された。奨励賞は起業家育成を通じた地方創生を目指す一般社団法人「徳島イノベーションベース」、特別賞は全国初の県立夜間中学校「しらさぎ中学校」に贈られる。
大賞に決まったTICOは1993年、医師の吉田修代表理事が設立。主にアフリカ南部ザンビアで、心臓外科医の育成プロジェクトや、農村部での保健医療指導、妊婦待機所「お産を待つ家」の開設などに取り組んできた。物資や技術を与えるのではなく、地域の自立を目指すことに軸足を置いて活動している。
今年3、4月にはロシア侵攻を受け、ハンガリーの臨時医療施設を訪れてウクライナからの避難民を治療した。
奨励賞に選ばれた徳島イノベーションベースは「起業家が起業家を生み育てる」をコンセプトに、電子書籍取次大手メディアドゥ(東京)の藤田恭嗣社長=那賀町出身=が発案。徳島新聞社などと共同で2020年1月に設立され、起業家育成に取り組む。月例会では、会社員や高校生らさまざまな立場の人が集い学んでいる。
特別賞の県立しらさぎ中学校は、戦禍や不登校などで十分学べなかった老若男女を無償で受け入れ、学び直しの機会を提供。外国籍の生徒に対する日本語指導も手厚く、「生きる力」を育む。全国的に夜間中学校の設置が進まない中、モデルケースとなっている。
徳島新聞賞は地域活性化に貢献し未来を育む活動や業績を顕彰することにより、徳島の発展を後押しすることを目的としている。贈呈式は6月1日、徳島市のJRホテルクレメント徳島で行う。