徳島市内で未利用の県有地や市有地が10万平方メートルを超え、さしたる利用計画もないままに“塩漬け状態”となっている。学校や公的施設の移転・統合などで市の中心部には広大な空き地が幾つもできており、行政も新たな施設を造る財政的余裕がないことから、この先も今の状態が続く恐れがある。増え続ける空き地は県都の活力低下に拍車を掛けかねず、有効活用が課題となっている。
跡地利用が決まっていない主な公有地は、旧徳島東工業高校跡地(大和町2)や旧市立動物園跡地(中徳島町2)、5月に校舎の解体工事が完了した旧県立聾学校跡地(同)など。今後も、徳島東署(中洲町1)の移転や市文化センター(徳島町城内)の廃館で未利用地はさらに広がる。
東工業高校跡地は市が約2万平方メートル、県が約9千平方メートルを所有している。敷地内の県有地が4カ所に分散しているため、両者が協議して市有地と県有地を集約化することにしているが、この協議が進んでいない。互いに大通りに面した有利な場所の所有を主張し、話し合いは平行線をたどっている。
この跡地にできる施設の候補に挙がっていた徳島東署は徳島地方・家庭裁判所跡地(徳島町1)に移転することになり、市立体育館(徳島町城内)も現地で耐震改修中。他に建て替えや大規模改修が必要な大型公共施設はなく、県、市ともに「相手方に具体的な活用案が出てくれば話が進むのだが」と譲り合っている。南末広町で建設計画が進むイオンモールの駐車場として活用する話も持ち上がっているが、集約化の協議がまとまることが前提となる。
旧聾学校跡地と隣接する旧動物園跡地を合わせた約3万3千平方メートルも活用策は決まらないまま。聾学校跡地は県が新徳島東署の用地を取得するための換地候補に挙げているが、国との協議はこれからで、しばらくは未利用の状態が続きそうだ。
旧運転免許センター跡地(大原町余慶)は「県警として利用予定はない」(県警拠点整備課)ため、国や県、市に活用策の有無を照会し、利用計画がなければ民間に売却する。ただ、同課は「広すぎるので売れるかどうか」と頭を悩ます。
徳島大大学院の山中英生教授(都市計画)は「放っておけば価値は下がる一方だ」と指摘する。海外では暫定的に市民に開放する事例があると紹介した上で「行政は安易に売却するのではなく、市民とオープンな議論をするなどして人が集まる工夫をする必要がある」と話している。