米国が発動した鉄鋼製品への輸入制限に対し、各国から報復の動きが出ている。密接な経済関係にある隣国のカナダも、今月に入って報復関税を発動した。

 トランプ政権は自国の産業や雇用を保護する目的で3月以降、各国を相手に追加関税を発動。これに対し、中国や欧州連合(EU)など5カ国・地域が報復措置を実施しているほか、インドやロシアも対抗の構えをみせている。

 制裁と報復の応酬で世界経済はもとより、米国内の企業や農業にも影響が出始めている。こうした状況は、トランプ氏の本意ではあるまい。貿易摩擦がどの国にも無益ということを認識すべきだ。

 トランプ氏にとっての誤算の一つは、米国の代表的な二輪車メーカーのハーレーダビッドソンが欧州向けの二輪車製造を、海外に移す方針を明らかにしたことだろ
う。

 EUが6月22日から二輪車への追加関税を発動したためで、9カ月から1年半かけて外国の工場での生産態勢を拡大する方針だ。

 EUはこのほか、ウイスキーやたばこなどを対象に、また中国は豚肉や果物などに高関税を課しており、米国内の生産者や議会からも不満が噴出しているという。

 農産物への報復関税は11月の中間選挙を前に、与党・共和党の支持基盤を直撃するだけに深刻なはずだ。

 ところが、トランプ氏は強硬姿勢を変えようとしない。

 中国に対し、知的財産権の侵害を理由に、輸入する年間約500億ドル(約5兆5千億円)に相当する製品に25%の追加関税を課す。あすには、その一部の品目で実施する。

 一方の中国も、同規模で制裁課税に踏み切ることを明言しており、貿易戦争に発展する恐れも指摘されている。対立が泥沼化しないよう協議を進め、打開策を見いだしてもらいたい。

 トランプ政権が検討中としている、自動車の輸入制限も看過できない問題だ。

 中間選挙前にも判断する方針のようだが、最大25%の関税を課すとの見方もある。

 発動されれば、日本をはじめ各国の自動車産業にとって甚大な打撃となる。米国のメーカーも同様だ。冷静な判断が望まれる。

 トランプ氏の保護主義政策に対抗するには、多国間の枠組みしかないのではないか。

 日中韓など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会議が先日、東京都内で開かれた。

 関税削減や知的財産権保護など交渉の難航が予想されるが、年内妥結を目指すことで一致した。米国発の貿易摩擦の激化に歯止めをかけたいとの思いからだ。

16カ国の国内総生産(GDP)を合わせると世界の約3割、人口は半分を占める広大な自由貿易経済圏となる。

結束を強め、質の高い協定を実現してほしい。そうすることが、米国への強いメッセージになる。