移住者の保坂さん(左端)と菅野さん(左から2人目)に話を聞き、脚本を作る生徒=吉野中

移住者の保坂さん(左端)と菅野さん(左から2人目)に話を聞き、脚本を作る生徒=吉野中

 吉野中学校(阿波市吉野町)1~3年の有志22人が、東京電力福島第1原発事故による風評被害や偏見をテーマにしたオリジナルの人権劇を作った。事故をきっかけに市内に移住した住民に取材し、脚本作りに生かした。6日、同校の文化祭で上演する。

 吉野中の人権劇上演は1970年代から続く伝統行事。取り上げるテーマは例年、市人権擁護地区委員会と話し合って決めており、今年は委員会の篠原えり子会長(64)が原発事故について関心を持ってほしいと提案した。

 生徒らは3年の筒井千尋さん(15)を中心に7月下旬、脚本作りに着手。原発事故の影響を懸念して関東から移住した市観光協会職員の保坂菊代さん(40)と菅野竜太郎さん(36)に原発事故の恐ろしさや古里への思いなどを聞き、脚本へのアドバイスを受けた。

 劇は、福島県から吉野中に転校した女子生徒が級友から「放射能がうつる」などとうわさされ差別を受けるが、生徒が正しい知識を身に付けると偏見もなくなっていくというストーリー。無料通信アプリLINE(ライン)によってうわさが広がっていく場面を盛り込み、近年問題になっている「ネットいじめ」の怖さも浮き彫りにしている。

 生徒たちは8月中旬から毎日、演技の練習を行っている。女子生徒を演じる3年の三好鈴花さん(14)は「差別された人の悲しさが伝わるように演じたい。震災や原発の問題に関心を向けるきっかけにもしてほしい」と意気込む。

 劇は午前10時半ごろから同校体育館で。一般住民も観賞できる。