戦後、鏡台産業の黄金期を築いた徳島市渭東地区に、「阿波鏡台歴史館」が6日にオープンする。近年の鏡台産業の急激な衰退を受け、木工職人たちの高度な技術や盛衰の歴史を多くの人に知ってもらおうと、老舗の江淵鏡台店(徳島市末広1)の江淵達人社長(67)が店のギャラリーを改装して設けた。年代ごとの鏡台やレプリカ計12点と、年表、グラフ、写真などを展示する。
約50平方メートルに、江淵鏡台店や同地区の木工業者が戦後間もないころから1998年までに製造した鏡台をはじめ、購入者から借りた製品を並べる。高級感のある装飾や塗装が施された80年代の三面鏡、昭和天皇、皇后両陛下が購入された53年製の鏡台のレプリカなども置く。
同地区の大和町、福島、安宅などは、藩政期から木工の街として栄えた。明治時代に発祥したとされる徳島の鏡台は、戦後復員した若者が相次いで結婚したことから婚礼家具の需要が増え、急成長を遂げた。全国のシェアを静岡県と二分し、高度経済成長期の64年には出荷額が30億円を超え「鏡台王国」と呼ばれた。
75年には県内に169の鏡台関連業者があったが、生活様式の変化などで備え付けのドレッサーなどが主流になると、需要は激減し、多くの業者が廃業した。80年代後半に約25万本あった県内の鏡台出荷数は2015年には千本に落ち込んでいる。
歴史館では、こうした鏡台の歴史が分かる年表や出荷数の推移を示したグラフ、製造業者の分布を示した地図なども展示する。
江淵社長は「徳島の鏡台の歴史を後世に伝え、伝統を守っていきたい。若者に関心を持ってもらうきっかけになれば」と話している。歴史館は午前8時半~午後6時開館。入場無料。
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