加茂宮ノ前遺跡から出土した鉄器を製造するための道具類(下部)や鉄製品

 徳島県阿南市加茂町の加茂宮ノ前遺跡で、弥生時代中期末~後期初頭(約2000年前)の竪穴住居跡20軒が見つかり、このうち10軒では鉄器を製作した鍛冶炉や鉄器作りに用いた道具類などが出土した。県教委と県埋蔵文化財センターが5日発表した。鉄器の製造工房としては国内最古級で、集落(ムラ)の半分が工房という特徴から、県南部に大規模な鉄器の生産拠点が形成されていたとみられる。

 

 竪穴住居跡で最も大規模なものは直径が約7メートルあり、その内部に鍛冶炉が19カ所あった。鍛冶炉は直径30~40センチで、鉄をやじりや小型ナイフなどの小さな鉄器に加工するためのものという。住居跡からは鉄器に加え、鉄器の形状を整える台石、製品を仕上げる砥石(といし)などが出土した。

 石のやじりや糸を紡ぐ道具の紡錘(ぼうすい)車、古代の祭祀(さいし)などに使われた赤色顔料・水銀朱(すいぎんしゅ)を生産する石杵(いしぎね)や石臼なども確認。さらに、ガラス玉や管玉(くだたま)など、県内で数点しか出土していない希少な装飾品も多数含まれ、出土品は計約50万点にも達する。

 集落は、鉄器以外にもさまざまな物品を製作する工房として活用され、交易拠点としても繁栄していた可能性があるという。

 県教委などは2016年度から、加茂宮ノ前遺跡の発掘調査を実施。17年2月には出土品の分析などから、南西約5キロにある若杉山遺跡で採掘された原料を使い、水銀朱を製造した工房跡との調査結果を公表している。

 同時期の鍛冶炉は九州や中国地方にもあり、県内では矢野遺跡、名東遺跡(以上徳島市)、光勝院寺内遺跡(鳴門市)の3カ所で確認されているが、県南部では初めて。県埋文センターは「他の遺跡では鍛冶炉を備えた住居跡は1、2軒だが、半数もあるのは全国的にも特異だ」としている。

 14日午前10~11時半と午後1~2時半、現地説明会がある。問い合わせは県埋文センター<電088(672)4545>。