足元に収めるには難しい高さのこぼれ球。小刻みにステップして間合いを計り、思い切ってジャンプボレーした。左足から放たれたシュートはゴール左隅に突き刺さった。「うれしかった。初めてチームに貢献できたと思った」。5月の京都戦で徳島県出身選手として10年ぶりとなる得点を挙げた徳島ヴォルティスのMF小西雄大(20)は、鮮明にその瞬間を覚えている。
「連勝中だったし、絶対に結果が欲しい一戦だった」と京都戦に懸けていた強い思いを振り返る。主将の岩尾ら主力の欠場が相次いだ中、中盤の要として起用された。待望のJ初ゴールは、この日の決勝点になった。
プロデビューした昨年は先発6試合を含む13試合に出場したが無得点。オフはスペインの下部リーグの練習に参加し、技術を磨いた。「経験を生かさなくては」と意気込む今季は中盤で点を取れる選手になることが目標だ。「持たせたら怖い、シュートを打たせたくない、と思われる選手になりたい。そうすればパスの選択も効果的になる」とさらなる成長を期す。
阿波市出身。2人の兄の姿を追って小学1年からサッカーを始めた。「負けず嫌いで、兄たちと勝負して負けたら泣いていた」と苦笑する。
だが上達は早かった。ノールックパスなど小学生らしからぬ創造性豊かなプレーで評判に。そして6年の時、中学進学後のG大阪ユース入りを決断する。「高校サッカーにも興味があって徳島に残ることも考えたが、兄が背中を押してくれた」と明かす。
セレクションで約500人もの応募者の中から選び抜かれたユースの同期には、オランダのクラブで活躍するMF堂安やG大阪のFW食野ら将来を嘱望される俊英がいた。「切磋琢磨(せっさたくま)した同期と接する機会は減ったが、今も動画などで見ている。活躍していると自分のことのようにうれしく感じるし、励みにもなる」
故郷徳島のプロクラブであるヴォルティスの一員としての自覚も高まってきた。「自分や(生光学園高の藤原)志龍が活躍して、さらに若い世代の刺激になり、県出身選手が続々と現れるサイクルができればいい。そのためにももっと活躍したい」。県民の期待を背負い、背番号「32」は走り続ける。