海陽町の地域おこし協力隊員藤岡美希さん(31)が、町内でとれた農産物を使った洋菓子を次々に開発している。町産農産物の魅力をPRし、農家の収益向上につなげることが狙いで、特産の番茶「寒茶」のクッキーやニンジンのケーキなど6種類を商品化。素材の味を生かしたおいしさに加え、植物性の材料にこだわるなど健康面への配慮から食への関心が高い住民らの間で人気が高まっている。藤岡さんは「町の新たな名物になれば」と意気込んでいる。

 

開発した洋菓子を手にする藤岡さん=同町宍喰浦の「すぎのこ市場」

 

 藤岡さんは高松市出身で、京都府やカナダ、高松市でパティシエを8年間務めていた。結婚を機に海陽町に移住するのに合わせ、町活性化のために自身の技術を生かせないかと考えて協力隊員に応募。昨年11月の着任以降、同町宍喰浦の産直市「すぎのこ市場」の運営や販売支援に当たっている。

 地元農家の農作業を手伝った際にもらったサツマイモでスイートポテトやタルトを試作した藤岡さんは、水がきれいな町でとれた野菜のおいしさに感動。「こんなにおいしい野菜を県内外の人にもっと知ってもらいたい」と考え、今年1月から本格的に洋菓子の開発を始めた。

 

キャロットケーキはシナモンが利いた大人の味わい

 

 これまでに商品化したのは、寒茶のクッキー(税込み130円)、キンカンのパイタルト(150円、販売休止中)、キャロットケーキ(130円)、カボチャのプリン(150円)、寒茶のグラノーラ、藍の実とスダチのグラノーラ(いずれも450円)。

 

伯爵(はくしゃく)カボチャを使ったプリンはてんさい糖の甘味で優しい味わい

 

 おいしいのはもちろん、体に良くて多くの人が食べられる商品にしようと、牛乳の代わりに有機豆乳、バターの代わりにごま油や菜種油を使用。砂糖も一般的な白下糖ではなく、ダイコンから作られて血糖値の上昇が緩やかとされるてんさい糖を使うなど素材にこだわっている。

 

グラノーラは寒茶のさわやかな味わいや藍の実とスダチのほのかな苦味が生かされている

 

 すべての商品はすぎのこ市場で販売しており、購入客からは「おいしい」といった評価のほか、食物アレルギーのある子どもを持つ親や、動物性食品を食べないビーガンの外国人らから「これなら食べられる」と喜びの声が寄せられており、繰り返し購入するリピーターもいる。

 藤岡さんは現在、町などが一大産地としての再生を目指すキュウリを使った菓子の開発に取り組んでおり、「今後も季節ごとの農産物を使ったお菓子を開発し、住民グループなどで生産してもらうことで町の新たな名物に育てたい。農家の収入アップや町産野菜のPRにつなげられれば」と話している。