子どもが喜ぶ場所といえば、多くの人が頭に思い浮かべるであろう「動物園」。それなのに、とくしま動物園北島建設の森(徳島市)を6歳の孫と訪れた60代女性から「見られる動物が少なくて残念」と落胆する声が、徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」に寄せられた。四国最大規模の動物園として、1998年にオープンしてからおよそ四半世紀。記者が足を運ぶと、所々に「展示中止」や「死亡」を知らせる貼り紙が...。一体どうなっているの。

ゾウがいなくなった獣舎=とくしま動物園北島建設の森

 女性は3月下旬、徳島県外から帰省した娘と6歳の孫を連れ、とくしま動物園を約20年ぶりに訪問。娘家族が住む地域には動物園がなく、「孫も喜ぶのではないか」と期待していた。ところがいざ園内に入ると、パンフレットに載っているゾウもキリンも見当たらない。複数の鳥類がいるフライングゲージも展示中止になっていた。「ここもおらん」「次もまたおらん」。目当ての動物にはほとんど出合えず、孫は「お昼寝中かな」と肩を落としていたという。結局動物園では時間をつぶせず、急きょ隣接する遊園地へ。孫の機嫌は直ったものの、女性は「寂しいどころか残念で、落胆した」と振り返る。

キリンがいなくなったサバンナエリア=とくしま動物園北島建設の森

 ホッキョクグマなど、1頭しかいない展示スペースもあった。「生き物を飼うにはお金がかかるので難しいかもしれないけど、たった1頭ではかわいそう。ペアや家族で飼育してほしい」と女性。対照的に、とくしま動物園はカピバラの数が日本一多いことを挙げ、「パフォーマンスをしながら餌をやるなど、来場者を増やすために宣伝すればいい」と指摘する。近くには植物園もあり、開業当初は子どもからお年寄りまでが丸一日楽しめることも売りだった。「県内には子どもを連れて行ける場所が多くない。この辺りはスペースも広いので、充実して過ごせる場所にしてほしい」と望む。

カワウソの展示中止を知らせる貼り紙=とくしま動物園北島建設の森

 とくしま動物園では、2020年9月にマサイキリンの「イッペイ」が死ぬと、同12月にアムールトラの「ヒロシ」、21年7月にセイロンゾウの「マリー」、同12月にはホッキョクグマの「イワン」と、目玉の動物が相次いで息を引き取った。さらに同12月からはプールの故障でコツメカワウソの展示が見送りに。22年1~3月には高病原性鳥インフルエンザ対策で、フンボルトペンギンやガチョウ、フラミンゴなど15種類の鳥類が展示中止になっていた。

ゾウがいなくなった獣舎=とくしま動物園北島建設の森

 動物園を運営する徳島市は、22年度当初予算に、キリン獣舎の増築費用など約1億6400万円を盛り込んだ。獣舎2室を改修し、23年度にはキリンのペアを迎えて繁殖を目指す。コツメカワウソのプールについては、6月末に改修工事を終える見通しだ。

 一方で、野生動物の取引はワシントン条約で規制されており、ゾウなどの入手は難しくなっている。唯一のゾウだったマリーがいなくなった獣舎は、曜日限定で来園者が自由に出入りできるように開放。これまでとくしま動物園で飼育してきたゾウの年表や、ゾウの足の手入れに使う道具などを展示している。柳澤宏子園長は「見られる動物が少ないことについては申し訳ない。訪れた人にできるだけ楽しんでもらえる施設にしたい」と話した。

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