新型コロナウイルスの流行でマスク生活が定着し、2年余りがたった。重症化リスクの低いオミクロン株が感染の主流となり、海外で着用義務の撤廃や緩和が進んでいるのに対し、日本での議論は低調だ。「このまま着用を続けるべきか」―。徳島新聞「あなたとともに~こちら特報班」が公式LINE(ライン)登録者にアンケートしたところ、賛否は大きく割れた。
アンケートは7~9日に行い、317人が回答した。「コロナの終息まで」または「もう少し感染者数が落ち着くまで」着用を続けるべきだとする答えと、「屋内でも着用しなくていい」または「屋外など状況によっては着用しなくていい」とする答えが、それぞれ半数近くを占めた。
理由について、着用の継続を求める人の多くは自身や周囲に対する感染や、流行「第7波」の到来を懸念していた。中には「インフルエンザや風邪の予防にもなる。社会全体で取り組めば、医療費も削減できる」(阿南市、40代男性)との声もあった。
重症化率や死亡率の低下を受けて英国は1月、フランスは3月に着用義務を撤廃した。米国も全域で屋内での着用義務をなくした。
アンケートの回答者でも「脱マスク」を訴えた人の多くが、重症化リスクの低さやワクチン接種の進展を強調。着用の弊害として「息苦しい」「肌が荒れる」といった声のほか、「表情が分かりづらく人間関係が希薄になる」(東みよし町、50代女性)との意見もあった。
子どものマスク着用を巡っては、日本小児科学会が乳幼児の着用に危険があると警鐘を鳴らす。回答者からも「心身の健全な発達に問題が生じるとの指摘がある。効果より悪影響が大きい」(阿波市、60代女性)などと、発育を心配する声が複数寄せられた。
国立感染症研究所の脇田隆字所長は4月下旬の衆院厚生労働委員会で、熱中症対策を念頭に「屋外で人との距離が十分ある場合は、マスクを外すことが推奨される」と発言。十分な距離を確保できない時や会話時は、不織布マスクを着用する必要があるとした。
「四六時中マスクを着用するような非論理的な対応を求める必要はない」。関西大の高鳥毛敏雄教授(公衆衛生学)はこう話し、流行の長期化によって感染対策のノウハウが蓄積できていると指摘する。「状況に応じて着用の是非を国民に判断してもらうよう、メッセージを転換する時期に来ている」と、国に対して議論の活性化を求めた。
大阪大大学院の平井啓准教授(健康・医療心理学)はマスク着用を強制した海外と違い、日本では国民が自主的に着用してきた点に注目している。「本来なら屋内外を問わずリスクに応じて対応すべきだが、社会規範として定着した日本人の意識が変わるにはかなりの時間がかかるだろう」との見方を示した。
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