雲もないのに降る雨を「天泣(てんきゅう)」という。雨粒が落ちる前に雲が消えたり、風に運ばれてきたりして、ぱらぱらと降る雨である。天が泣く、その程度ならいい。地を泣かす雨は、決まって度が過ぎている

 2年続けて、この時季はいけない。昨年の7月5日、九州北部豪雨。40人が亡くなり、2人の行方がいまだに分からない。1年たった今もなお、1100人以上が仮設住宅などで避難生活を送っている

 西日本を中心に記録的な大雨が続いている。「数十年に1度の、これまでに経験したことのないような、重大な危険が差し迫った異常な状況」にある。気象庁はそう判断し前例のないほどの府県を対象に「特別警報」を発表した

 職場の、つけ放しのテレビが荒れる川を映す。広島で、岡山で、町が土色に沈んでいる。民家が土砂に押しつぶされている。死者は既に50人を超え、安否不明者も多い

 四国でも、愛媛県で多数の犠牲が出ている。風光明媚(めいび)な瀬戸内の島では、母子3人が亡くなった。徳島県内でも、降り始めからの雨量が千ミリを超した地域がある。地の泣き声が届かないのか、予報では、雨はきょうも残りそう。土砂災害に厳重な警戒が必要だ。救助、復旧に当たる人も十分注意を

 「数十年に1度」が、毎年襲う災害列島である。対応も「数十年に1度」の水準に引き上げよう。