鳴門市に寄贈された美術工芸展覧会の賞状=市ドイツ館

 第1次世界大戦中、鳴門市大麻町の板東俘虜(ふりょ)収容所にいたドイツ兵捕虜が開いた美術工芸展の賞状が、子孫から市に贈られた。石版と謄写版(ガリ版)を組み合わせた丁寧な作りから、展覧会への意気込みが伝わる。捕虜が催したイベントの賞状が寄贈されるのは初めて。

 賞状は縦31センチ、横23センチで、線描画部門の1位を認定する内容。筆を持つ裸の男性や兵舎を描いた挿絵は石版で、主な文章は謄写版でそれぞれ印刷され、受賞者の名前や主催した捕虜7人の名前はペンで書かれている。

 受賞したのは元捕虜で建築家の故カールステン・ヘルマン・ズーアさん。板東収容所に統合される前の松山収容所時代に見た光景を描いたとみられる「来迎寺への上り道」で、線描画部門13点の中から1位に選ばれた。作品の図柄は不明。

 6月上旬に市内であったベートーベン「第九」アジア初演100周年記念事業に参加した孫のマリオン・ズーア・モイリッヒさん(64)=ドイツ・バッハラッハ在住=が行事に感動し、帰国後に寄贈を申し出た。

 モイリッヒさんは、2010年にもカールステンさんが大麻比古神社の境内を描いた鉛筆画を贈っている。

 展覧会は1918年3月、四国霊場1番札所・霊山寺や、近くにあった板東公会堂で開かれ、捕虜が制作した油絵や水彩画、模型、金属工芸など約500点が並んだ。当時の板東町が収容所外での開催を依頼し、12日間の会期中に5万人が訪れたとされる。