これほどの災害を前にすると、どうやって逃げ延びたらいいのか、と途方に暮れそうになる。避難しようにも難しい夜や早朝に泥流が迫り来る。山が崩れる。気が付いた時は、もはや事態はどうにもならないほど進んでいる
西日本豪雨で大勢の人が犠牲になった。その数は刻々と増えており、今も全容がつかめていない。町の約3割が浸水した岡山県倉敷市真備町では、きのうまでに、取り残された2千人近くが救出された。早め早めの避難が肝心だ、とはいうが、実はその判断が一番難しい
それでも中には避けられたかもしれない悲劇もあったようである。広島県東広島市の男性は6日夜、大雨特別警報が出た後、自宅の屋根をたたきつけるような雨に、一度は次男と避難所へ行く相談をしたそうだ。だが結局はとどまった
翌7日午前6時すぎ、裏山からの水が気になって外に出ると、雷鳴のような音がし、砂ぼこりが舞い上がった。「押し寄せた土砂で自宅が真っ二つになるのが見えた」
家の中にいた妻と長男が巻き込まれた。呼んでも、返事はなかったという。男性は悔やむ。「避難しておけばよかった」
豪雨に台風、大地震と想定外の災害が続く近年、安全な場所はないともいわれる。「もしや」が少しでも頭をかすめたなら、迷っている時間はない。それが避難時なのだろう。