軽快な語り口と安定した「MC力」、柔和な表情で四国放送の名物アナウンサーとして県民に広く知られる保岡栄二さん(59)。4月から定時のニュース番組に出演している保岡アナを見て「おや?」と感じた視聴者は少なくないのではないだろうか、そのすっきりとした頭に・・・。大胆にイメージチェンジをした真意について語ってもらった。(聞き手=矢田諭史)
―だいぶ雰囲気が変わられましたね。
7月に還暦を迎えます。生まれ変わるというか、60歳にして新たなスタートを切ろうという私の人生プランですね。格好良く言えば(笑)。
ここ数年、ヘアスタイルに苦労しました。男性なら誰しもが抱える悩みと思います。髪の毛がだんだん少なくなり、いろいろケアをしなければならなくなりました。仲の良い人と会話をしていると、「いい話なんだけど、そっち(髪型)が気になって内容が入ってこないんだよね」と言われたり(笑)。
私自身もネタにしている部分はありました。が、そんなやりとりがあると、「伝えたいことが伝えられない」「真実を伝えるのが仕事なのに。偽りだよな」と考えるようにもなりました。だから昨年12月31日に断髪し、新しい気分で新年を迎えたわけです。
―どのようなケアをしていたのですか。
髪が薄くなっている部分に黒い粉(パウダー)を振ります。粉が毛に付着して全体的に広がることで隠していました。でも、そのケアが大変。枕カバーの汚れが気になって熟睡できないし、公共機関で移動するときなども自由に寝られません。日中はシャツの襟周り、夏場は汗が気になり、雨の日は屋外の取材が難しい・・・。ここ数年、それがストレスと負担になって「もうこんな生活はやめよう」という思いになりました。
ケアをしていたのは、ある固定観念を持っていたからです。清潔感のある髪型や服装も含め、アナウンサーらしい理想の姿というものでしょうか。私も当然そうあるべきだと思っていましたから、いろいろ小細工しました。でも、その限界が訪れたということです。物理的にも精神的にも。最近、テレビの解像度がむちゃくちゃ良くなって(ケアしているのが)分かるんですよ(笑)。
―イメージチェンジ後、仕事や生活に変化はありましたか。
初めは確かに不安や葛藤がありました。スタジオのモニターに映った自分を見て「ほー」と思いました。けど、周囲の人は「似合ってるよ」「意外と頭の形がきれいだね」と。たぶん包み隠さずに本音で言ってくれているのだろうと信じています。まあ、それだけ気を遣わせていたのかな、ともね。視聴者からは「潔い」「元気をもらえた」との声もあったようです。気持ちは前向きになりましたし、プライベートでもよく眠れるようになりました。
―最後に一言お願いします。
(私を見て)驚いた人もいると思います。でも、暗い話ではなく、還暦を迎えたおっちゃんが生まれ変わったつもりで、等身大で頑張りますというのが真相です。これまで、できなかったことにも挑戦できます。本当に視界が開けました。
私も通ってきた道だから、髪型を気にしたり、ケアをしたりして悩みがある人の気持ちは分かります。今後どうしようかなと迷っている人には一つのメッセージになればと思います。
それと固定観念の打破。さまざまな生き方や価値観が誕生しており、私のようなアナウンサーがいてもいいのではないでしょうか。マイナス面ばかりを考えるのではなく、いろいろなことを認め合い、楽しく過ごせる世の中をみんなでつくっていけばいいのではないでしょうか。
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保岡 栄二氏(やすおか・えいじ) 1985年、四国放送に入社し、アナウンサー一筋で活躍する。さまざまなテレビ・ラジオ番組をはじめ、2008年9月に始まった情報番組「ゴジカル!」では初代メーンキャスターを5年務めた。現在はラジオ番組「ラジオ大福」、ニュース番組「徳島新聞ニュース」などを担当する。