「秘密の暴露」。どんな事件であれ、取調室で容疑者と向き合う刑事の頭には、この5文字がある。秘密とは、犯人しか知り得ない事実。暴露とは、秘密を自ら告白させることだ

 刑事ドラマのように「私がやりました」と語らせただけでは、実際の取り調べは終わらない。丹念に供述の裏付けを取り、うそや矛盾点も見抜かなくてはいけない。自白に基づき、凶器や奪った物を発見できれば、犯行の決め手となる

 では、捜査員が「暴力や脅迫」で自白を迫り、裏付けとなるはずの証拠を都合よくでっち上げれば、どうなるだろうか。裁判で「本当はやっていない」と訴えれば、冤罪(えんざい)は晴れるだろうか

 滋賀県日野町で起きた強盗殺人事件に、再審開始の決定が下った。「父ちゃんはやっていない。信じてくれ」。無期懲役囚となった阪原弘さんは、再審請求中に75歳で病死。「殺人犯の家族」と後ろ指をさされ、古里を追われた家族がその遺志を引き継いだ

 警察の大きな罪は、奪われた金庫の発見現場に、阪原さんが捜査員を自ら案内したように偽ったことだ。「秘密の暴露」と受け取られ、裁判の行方を決定づけた

 亡父の逮捕から30年となる。「父の喜ぶ顔が見える」と長女。「夢のよう」と長男。長い歳月を費やしたが、まだ終わりは見えない。父と家族の、汚名を晴らす闘いは続く。