チームの低調なパフォーマンスが目立った天皇杯鳥栖戦。その中で、徳島ヴォルティスの17歳MF藤原志龍が鋭い動きを見せた。後半21分にピッチに登場すると、精力的にピッチを駆け、攻撃を活性化。「試合を見ていて、攻めのパス、ドリブルがないように見えた。自分が出たときは、なるべく入れていこうと意識していた」と、ピッチサイドから感じていたチームの課題を打開しようと、言葉通りにプレーで表現した。
見せ場は後半27分、中盤右サイド寄りから右サイド深くへスルーパス。相手守備陣の裏へ抜け出したMF島屋八徳が低いクロスを入れ、ブエノのゴールにつなげた。限られた出場時間の中で、得点に絡んだ。得意のドリブルに持ち込める場面は少なかったものの、鋭い縦パスを送り、攻撃への意識を高く持ち続けた。「前を向けてボールをもらえる形が多かった。得点の起点になれたのはよかった」と、J1相手に手応えをつかんだ様子だ。
相手の鳥栖には、対戦経験のある19歳FW田川享介がいた。2学年上で、2016年にJユースカップで顔を合わせた。両者ともに得点した試合だったが「化け物だった」と当時を振り返る。J1での活躍に「J1であれだけやれているのはすごい」と話しながらも、藤原は同じピッチに立ち、存在感を見せた。
「J1とやるのは全然違う」。スピードや当たりなどの違いを肌で感じた。その中で、相手の寄せにも動じず落ち着いてボールをさばき、当たりにも負けなかった。課題である守備でも、長い距離を走って相手を追い、攻撃の芽をつんだ。「練習で後ろから当たられてもつぶされることは減った」と言うように、たくましさを増し、着実にレベルアップしていることをピッチで示した。
公式戦出場は6月の天皇杯2回戦以来。ロドリゲス監督が「プレー時間を与えたかった」と話したように、指揮官からの期待も大きい。トップデビューから、まもなく5カ月。プレシーズンの練習試合と同様に、J1勢との戦いでも臆することなく挑み、結果も手にした。攻守の切り替えや守備を課題に挙げながらも「練習から得意なプレーを見せなければ試合で使ってもらえない」と言い切る。リーグ戦では得点力不足にあえぐチーム。シーズン後編へ向けて攻撃陣の起爆剤となるか、目が離せない。