「てんご新聞」300号を手に、東祖谷の魅力を語る市岡さん=三好市東祖谷京上

 三好市東祖谷の住民グループ・活彩祖谷村の「村長」を務める市岡日出夫さん(74)が発行している、無料のミニ月刊紙「てんご新聞」が6月で300号になった。東祖谷の自然や文化、日々の出来事をつづり、四半世紀にわたって全国の読者に届けている。読者の高齢化で、部数は少しずつ減少。寂しさを感じながらも「新聞作りは生きがい」と、これからも郷土の魅力を届ける考えだ。

 創刊は1997年5月。活彩祖谷村の母体となる地域おこしグループ・てんごの会の活動を紹介しようと始めた。「てんご」は祖谷地方の方言で「おせっかい」の意味がある。新聞はB4判両面カラーで、月1回、約260部を自費で発行する。散歩中に見つけた植物や生物、四季折々の風景、地域の催しなどを写真付きで紹介している。

 全て手書きし、市役所支所のコピー機で印刷。宛名書きや封入、切手貼りも一人で担う。経費は毎月1万円以上かかるが、「楽しいからやっている。それに、全て自分でやれば好きなことが書ける」と労をいとわない。

 記念の300号は東祖谷栗枝渡(くりしど)で5月にあった、京都帝国大で起きた思想弾圧事件「滝川事件」(33年)に抗議した東祖谷出身の長尾孫夫(12~39年)をしのぶ催しを取り上げた。ロシアのウクライナ侵攻にも触れ、自由や平和への思いを記した。

 当初は会員向けの新聞だった。地域おこし活動の仲間や新聞を目にした観光客らの求めで郵送を始め、読者は全国に広がった。スイスにも送っている。

 2015年ごろのピーク時に300部を超えた発行部数が5年ほど前から次第に減っている。「施設に入る人や亡くなる人もいるのだろうか。毎月届いていた感想の手紙がぱたりと途切れることもある」と気に掛ける。「顔も知らない読者も多いけれど、寂しさがあります」

 それでも、次号への準備は欠かさない。散歩中に見た景色や、さまざまなニュースに触れて感じたことを熱心に書き留めている。「歩けなくなっても気力さえあれば書ける。健康である限り、発行を続けたい」と語った。