関根健次
 

 私たちの生きる世界をより良いものとし、誰一人取り残さない社会の実現を目指す国連のSDGs(持続可能な開発目標)。2020年からの10年は「行動の10年」と呼ばれています。今、私たちは、貧困や飢餓、働きがいや経済成長、つくる責任・つかう責任、気候変動や自然環境など、国際社会が抱える課題について、どのように知り、考え、行動へとつなげていくべきなのでしょうか。
 社会問題やSDGsをテーマとした映画の製作や配給を行うユナイテッドピープル株式会社 代表取締役、関根健次さんにお話を伺いました。

世界が直面している課題を解決したいという思い

 僕が今でいうSDGsを意識するようになったのは、学生時代の一人旅がきっかけです。訪れた約20カ国のうち、紛争地域として知られるパレスチナのガザ地区で、生と死が隣り合わせの日常に生きる人々と出会いました。戦争や紛争、貧困や飢餓といった、世界が直面する課題とリアルに向き合う経験をしたんです。
 大学卒業後、一般企業に就職しながらも、何か自分にできることはないかと模索していました。いろいろなチャレンジを経て、2002年に世界の課題解決を事業目的とするユナイテッドピープル株式会社を創業。この社名には「人と人との連帯」「力を合わせてより良い世界を創造したい」という思いを込めました。当初はインターネットを活用した募金サイト『イーココロ!』や署名サイト『署名TV』などを運営。2009年からはさまざまな社会問題やSDGsに関する映画の製作や配給を主な事業として展開しています。

皆で同じ映画を鑑賞し行動へとつなげていく

 より多くの人々に社会問題やSDGsへの関心を持ってもらい、行動を起こしてもらうには、どうすればいいのだろう――。そこで注目したのが〝映画〟でした。映画の力とは「人に感動を届ける」こと。心が動かされると行動につながるんです。
 僕の場合は、旅先での経験が原動力になりましたが、映画だったら現地へ行かなくても疑似体験ができますよね。その力を社会問題の認知や解決に使っていければと考えました。
 ユナイテッドピープルが製作・配給する映画は、世界のどこかで起きている重要な問題を題材としています。しかし、ただ事実を淡々と伝えるだけのものは選びません。なるべく観た人の心に新たな考えが生まれたり、元気づけてくれるような作品をセレクトするようにしています。
 また、映画館への配給だけではなく、誰でも上映会が主催できるシステムを整えた点も特徴の一つです。2014年から始めた映画上映会サイト『cinemo(シネモ)』では、全国各地で多くの自主上映会が開催中です。コロナ禍においては、オンラインでも行っていましたが、学校や公民館、カフェやレストラン、イベント会場など、規模に関係なく社会問題やSDGsをテーマとした映画を上映し、感想を話し合ってもらう活動を大切にしています。観客同士が意見を交換する場をつくることで、自分では気づかなかった発見や解決へと向かうアイデアの種が生まれるのではないでしょうか。
 同時に、こうしたディスカッションの場からは、同じ志の仲間が増えていきます。一人ひとりの持つ力は小さくても、アクションを起こす人が増えていけば、きっと世界は変えられる。その手段として〝映画〟を届けていきたいと考えています。

世界の流れは一人ひとりの選択が積み重なったもの

 2016年4月からの約1年、中央アメリカにあるコスタリカ共和国で暮らしました。国土の約4分の1超が国立公園・自然保護区という環境先進国です。軍隊を持たず、水力や風力などの自然エネルギー発電も盛んで〝21世紀の理想的国家〟として注目されている国でもあります。
 ここで生活して感じたのは、理想を持つことの重要性でした。一足飛びに日本をコスタリカのような国にするのは不可能かもしれません。でも、良いところを少しずつ取り入れるようにはできますよね。知ることで選択の幅を広げ、より良い世界へと近づけていく。SDGsを身近に感じ、物事を考えるには、そこが出発点になるだろうと思うんです。
 たとえば、あなたが何気なく手に取ったシャツは、不当な労働によって安価につくられたものかもしれません。食の問題もそうですね。売り場に並ぶ魚介類の棲む海は、乱獲で生態系が破壊されている可能性もあります。日々の暮らしのなかで直面する一つひとつの選択が、世界の幸福も不幸も拡大してしまうんです。
 安易に選ぶのは止めて、じっくりと考えてみる――。買い物だけではありません。自分を取り巻くさまざまな物事の背景に思いを馳せてみてください。一人ひとりの選択が積み重なって世界の流れができています。そこが変わっていけば、確実に良い方向へと風向きが変わるはずです。
 物事の背景を知り、考えるきっかけには映画が最適だと思います。それぞれの立場で話し合い、多様な視点の意見を交わすことで、明るい未来に近づくのではないでしょうか。
 世界中の社会課題は、すべて人間が引き起こしたものです。言い換えれば、人間によって解決できないものはない。僕はそう信じています。

ユナイテッドピープルおすすめの映画作品

 

ゴースト・フリート知られざるシーフード産業の闇

タイの漁船から離島に逃げた人々を捜索し、救出すべく命がけの航海に出るタイ人女性、パティマ・タンプチャヤクル(2017年ノーベル平和賞ノミネート)たちの活動を追う。奴隷労働5年、7年、12年──。ミャンマー、ラオス、カンボジアなど貧困国から集められ、売り飛ばされた男性たちをパティマたちは救うことができるだろうか?

製作国/アメリカ
時間/90分 製作年/2018年
監督/シャノン・サービス、ジェフリー・ウォルドロン

 

プラスチックの海

多くの科学者や識者が警鐘を鳴らす、海洋プラスチック問題。プラスチックゴミによる海洋汚染の実態とは?そしてプラスチックが海に、プランクトンに、クジラに、海鳥に、人体に及ぼす影響とはー?デイビッド・アッテンボロー、シルビア・アール、タニヤ・ストリーター、バラク・オバマ他が出演。海と共に生きる全人類必見のドキュメンタリー。

製作国/イギリス・香港
時間/100分,22分 製作年/2016年
監督/クレイグ・リーソン

 

ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償~

これは衣服に関する物語で、私たちが着る服や衣服をつくる人々、そしてアパレル産業が世界に与える影響の物語だ。これは貪欲さと恐怖、そして権力と貧困の物語でもある。全世界へと広がっている複雑な問題だが、私たちが普段身に着けている服についてのシンプルな物語でもある。

製作国/アメリカ
時間/93分 製作年/2015年
監督/アンドリュー・モーガン

 

 

もったいないキッチン

“もったいない”精神に魅せられ日本にやってきたのは、食材救出人で映画監督のダーヴィド・グロス。ところがもったいない精神を大切にしてきた日本の食品ロスは、世界トップクラス。ダーヴィドはコンビニや一般家庭に突撃し、捨てられてしまう食材を次々救出!キッチンカーで美味しい料理に変身させる“もったいないキッチン”を日本各地でオープンする。

製作国/日本
時間/95分,35分 製作年/2020年
監督/ダーヴィド・グロス

 

バベルの学校

世界中からパリ市内にある中学校の適応クラスにやってきたのは20の国籍、24名の生徒。この世界の縮図のような多文化学級で、フランスで新生活を始めたばかりの十代の彼らが見せてくれる無邪気さ、熱意、そして悩み。果たして宗教の違いや国籍の違いを乗り越えて友情を育むことはできるのだろうか。
文部科学省特別選定 
社会教育(教養) 青年向き 
文部科学省選定
社会教育(教養)成人向き 
(2015年1月15日選定)

製作国/フランス
時間/89分 製作年/2013年
監督/ジュリー・ベルトゥチェリ

関根 健次氏 せきね  けんじ

ユナイテッドピープル株式会社 代表取締役、一般社団法人 国際平和映像祭 代表理事。ベロイト大学経済学部卒。大学の卒業旅行の途中、偶然訪れた紛争地で世界の現実を知り、後に平和実現が人生のミッションとなる。2002年、世界の課題解決を事業目的とするユナイテッドピープル株式会社を創業。2009年から映画事業を開始。2014年より誰でも社会課題・SDGsテーマの映画上映会を開催できる「cinemo(シネモ)」を運営開始。映画『もったいないキッチン』プロデューサー。2021年9月21日、ピースデーにワイン事業「ユナイテッドピープルワイン」を開業。
■受賞歴
2011年 iSB公共未来塾 横浜地区 第3回社会起業プランコンペ最優秀賞
2011年 iSB公共未来塾 最優秀賞(全国)
2007年 イーココロ!事業において第2回「ソーシャル・ビジネス・アワード」で
    マイクロソフト奨励賞受賞。