「少年や少女たちが、色紙のかけらでも振り撒いたような賑やかさで散らばっていた。叫び声や喚声は絶えず起っていたが、それらは波の音で消されていた」。作家井上靖氏の自伝的小説「夏草冬濤(なつぐさふゆなみ)」の一節だ。沼津中学(旧制)に転校し、水泳講習会で、泳げないと渋った洪作は、上級生のしごきに遭う。自由な空気の中で、成績も下がり始めた。

 井上氏が中学生だった大正時代も今も、カラフルな浜辺の光景は夏の風物詩。初めて読んだ長編小説の世界は年とともに懐かしさを増す。

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