半田そうめんの魅力を発信し続ける田中さん=海陽町四方原

 東京都で半田そうめん料理専門店「阿波や壱兆(いっちょう)」を営む海陽町出身の田中嘉織さん(51)=中野区=が、人気メニューを家庭で手軽に食べられる冷凍そうめんセットの販売を始めた。新型コロナウイルス禍で店が厳しい状況に置かれる中、新たな販路を開拓する狙い。今月には新店舗を設ける予定で、半田そうめん普及へ挑戦を続ける。

 阿波や壱兆は2009年に東中野で開業。麺の太さや強いこしが特徴の半田そうめんを使った日替わりメニュー360種類以上を提供し、たちまち人気店となった。しかし、20年以降は新型コロナのあおりを受けて客足が激減。昨年8月に12年間営業した店を閉め、新宿の高層ホテル内にあるシェアキッチンに移った。

 愛着があり、常連客もいる店を手放すのは大きな決断だった。しかし、田中さんが落ち込むことはなかった。それまではがむしゃらに走り続ける日々で商品開発に専念する余裕がなかったが、「空き時間を生かせるチャンスだ」と前向きに捉え、5年前から構想を温めていた冷凍麺開発の仕上げに取り掛かった。

 試作を重ね、乾麺をゆでた時と同じこしを冷凍で再現することに成功。定番メニュー「阿波や壱兆温めん」の麺とだし、具材のセットを5月に予約販売すると、限定30食がその日のうちに売り切れた。購入者からは「クオリティーが高い」「次の販売も楽しみにしている」と大きな反響が寄せられた。

 冷凍加工は県外企業に依頼しているが、加工まで県内でできるよう、海陽町の給食センター跡地を借り、加工場を整備する準備を進めている。今秋の稼働が目標で、将来の地元住民雇用も検討している。田中さんは「地元食材をふんだんに使い、町の魅力も広めていければうれしい」とアイデアは尽きない。

 今月中旬にはグルメの街として注目を集める新大久保の駅ビル内にあるシェアキッチンに新店舗をオープン。カップに入ったそうめんを出すなど新しい提供方法にも挑む。「飲食店のスタイルが激変している今だからこそ、何をやっても面白い。変幻自在のアレンジができる半田そうめんの認知度を高めたい」と力を込めた。