イタリアで来年開かれる「第15回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展」の日本代表に、神山町で空き家再生に取り組む建築設計家集団「バス・アーキテクツ」が選ばれた。古民家や蔵を壊さずにサテライトオフィス(SO)などに改修し、地域のにぎわいづくりにつなげる「創造的過疎の建築」の試みが評価された。
「バス-」は徳島市国府町出身で東京芸大、米ハーバード大大学院で建築を学んだ坂東幸輔さん(36)=東京都=が、建築仲間の須磨一清さん(39)、伊藤暁さん(39)と神山での活動のために結成したグループ。空き家をSOに再生した「えんがわオフィス」などオフィス7棟、地元産木材を使って周囲の景観と調和させた宿泊施設「ウイーク神山」を手掛けている。
ビエンナーレでは、政府などが設ける日本館内にSOや宿泊施設の模型、写真、資料を展示。古民家や自然に引かれて技術者らの移住が相次ぎ、新しい働き方が根付く神山の事例を紹介する。
徳島県のPR動画「vs東京」を手掛けた映像作家菱川勢一さん(46)が、神山町の四季の風景や住民の暮らしぶりを撮影した映像を、模型に映し出す「プロジェクションマッピング」も行う。
坂東さんらは、日本館キュレーター(運営責任者)の山名善之・東京理科大教授から、出展者として指名された。国内からは他に11組が参加する。
「バス-」はNPO法人グリーンバレーの依頼で、2010年から手弁当で活動を始めた。当初は予算がなく、東京から神山への移動に夜行バスを使っていたことが名称の由来。坂東さんは「思いがけない評価を受け、光栄だ。東京発ではなく、徳島発で新たな日本の価値観を世界へ発信できることが何よりもうれしい」と話している。