ほたる村まつりで太鼓を演奏する山内さん(中央)=2005年3月26日、旧日和佐町山河内

寄贈した絵本の原画を持つ山内さん。手前は絵本「ひわさの四季シリーズ」=美波町役場

 「かっぱのげんさん」の愛称で知られる山内満豊さん(83)=美波町北河内=が、30年以上を過ごした同町から転居した。運営していた自然体験施設・ほたる村=山河内=が昨年、開設30周年を迎えたのを機に知人と「村長」を交代。これを節目に、かつて住んでいた兵庫県尼崎市に移った。「美波にはいい思い出ばかり。やりたいことができた」と充実した日々を振り返った。

 山内さんは愛媛県東予市(現・西条市)出身。もともと自然の中での暮らしが好きで、病気から回復したのをきっかけに1991年、尼崎市から旧日和佐町に移住した。

 泥んこ遊びや魚釣り、農業体験が楽しめるほたる村を開設。村に建てたコテージに友人を招くうち、口コミで全国から家族連れが遊びに来るようになった。幼稚園や小学校でこま回しなどの大道芸を披露していたのが縁で、遠足で訪れる学校も増えた。村で祭りを開いていた90年代末には年間1万人近くが利用した。

 80歳を過ぎ、山内さんが村の存続について考えていたところ、2020年秋、村の運営に興味を示した東京都在住の清水暢彦さん(36)を孫から紹介された。清水さんは何度か村を訪れ、21年3月に阿南市に移住。約半年かけて村長の業務を引き継ぎ、交代した。

 山内さんの活動は、18年まで美波町を活動拠点にしていた絵本作家梅田俊作さん(79)=東京都狛江市=や、今年3月に84歳で亡くなったカヌーイストで作家の野田知佑さんが町内に移住を決めるきっかけにもなった。梅田さんは、山内さんをモデルにした「げんじいさん」が登場する絵本「ひわさの四季シリーズ」(全3作、1992~94年出版)を製作。町を去る際、山内さんに絵本の原画約60点を渡した。

 山内さんは転居に伴い、6月24日に原画を町に寄贈した。「登場人物も描かれた風景も全て実在する。子どもたちにかつての町の姿を伝えるため、活用してほしい」と影治信良町長に訴えた。町は日和佐公民館(奥河内)で数点ずつを定期的に入れ替えながら紹介する。日和佐図書・資料館ギャラリー(同)での展示会も予定している。

 山内さんは美波での暮らしについて、「素晴らしい自然の中で村を運営し、全国から多くの人に来てもらえた。これからもたびたび訪れたい」と語った。