公共交通の利用者が減少する中、バス交通の活性化について考えるセミナー(国土交通省四国運輸局主催)が14日、徳島市のあわぎんホールで開かれた。財政難に伴い、民間委託や廃止に踏み切る公共バスが増える一方で、高齢者の移動手段としての需要は依然高い。出席した自治体関係者やバス利用者ら約120人は先進事例に耳を傾け、将来の「地域バス」の在り方を探った。
「みんなの協働で地域バス交通をつくり・育てる」と題したパネル討論では、応神ふれあいバス運行協議会の近藤佳子代表世話人、徳島市都市整備部の伊賀俊雄地域交通課長、伊予鉄道の玉井伸二運輸事業本部長、名古屋大大学院の加藤博和准教授(交通政策学)がそれぞれ取り組みを紹介した。
ふれあいバスは同市応神町一帯を走るコミュニティーバスで、2011年に運行開始。マイカーを持たない高齢者らの交通手段確保が目的で、住民有志が協議会を設けて運営している。10人乗りの車両を利用し、量販店や金融機関、診療所など生活に必要な各施設を巡回。14年度の利用者は4500人を超えている。
近藤さんによると、運転手が荷物運びをしたり、乗降を手伝ったりするなどきめ細やかなサービスも行う。「車内では利用者同士で会話が弾み、交流の場にもなっている」と説明した。
ほかのパネリストも「バスの位置が利用者に分かるシステムを導入した」「高齢化の進む団地への乗り入れを増便した」などと利便性向上の事例を挙げた。
討論に先立ち、加藤准教授の基調講演もあった。新路線などの運行計画作成の際には地域のニーズを把握する必要があるとして「バス事業者と自治体関係者、そして利用者の話し合いの場が大切だ」と呼び掛けた。
応神ふれあいバスを利用している同市応神町古川の船城ミツ子さん(92)は「長い距離を移動する必要がないので、地域を巡回するバスが一番助かる。今後はどの地域でも必要とされる運行方法になるのでは」と話していた。